809 最後の力で ページ2
「「『デッドフューチャー』！！」」
「『ペンギン・ザ・ハンド』！」
衝撃波が選手たちの髪をなびかせる。
シュートの勢いを殺しきることはできなかった。ボールは前方に弾かれ、メカ円堂の身体は反動でゴールネットへ叩き込まれる。
そしてボールの転がった先──メイアとギリスは勝ちを確信した表情で、互いの手を取った。
「「『情熱のラヴァーズ』！！」」
顕現する二体の化身。
メカ円堂は、軋む体に鞭打って立ち上がった。両腕から煙を出しながら。
「まだだ──まだやれる！」
そうして両手を天に掲げた瞬間──その背中から巨大なオーラが噴出した。
私たちは絶句して、そのオーラが力を増していくのを見つめるしかなかった。そうして現れたのは、
「『英知の王ブングオー』！！」
化身──これがメカ円堂の最終兵器か！
「ロボットの化身なんて──」
「吹き飛ばしてやるわ！」
二人同時の化身シュートが放たれる。
メカ円堂はそれに全力で対抗した。目を開けていられないほどの風圧が押し寄せてくる。あまりにも激しいぶつかり合いだった。
しかしいくら円堂監督のデータをインプットしたロボットといえど、物理的な衝撃への耐久は限界があった。
とうとう右腕の装甲が剥がれた……と思った次の瞬間、その身体が爆発する。
メカ円堂は──跡形もなく吹き飛んだ。赤いバンダナの切れ端を残して。
「くそっ、止められるなんて……」
「いいえ、まだよ！」
メイアが上方を指し示す。弾かれた衝撃で打ち上げられたボールが、地上へ落ちてくるところだった。
シュートされたら一巻の終わりだ。私の足は、考える前にゴール前へ向かって動いていた。「A？！」と、神童が後ろから呼び止めてくる声を置き去りにして。
「「『デッドフューチャー』！！」」
ゴール前、真正面から迫りくるシュートを視界の中心に据えた私は覚悟を決める。
三度目の正直だ。やろう、クロエ。絶対に止めてみせる！
「『悠久の覇王クロエ』──」
「どけ！！」
お腹に力を込めた瞬間。両足が地面から離れたと思ったら、私の身体は地面に倒れていた。
首根っこを掴まれて放り投げられたのだと気づくのに、三秒ほどかかった。そうして顔を上げて絶句する。
ザナークが、己の身ひとつでシュートを受け止めていた。ザナークはボールに右足を乗せ、自信満々な笑みを浮かべてみせる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 288人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：キメラ | 作成日時：2023年12月28日 11時
