764 希望の光を見据えて ページ7
「そうか。別れは惜しいが、私が無理に引き留める権利もあるまい。君たちの旅路が実りあるものになることを、ここから願っているよ」
事情を説明された
この時代での出会いは、また私たちの糧となり、思いを未来へと繋げてくれるだろう。
「本当に、ありがとうございました。では──」
「あ……待ってくれ。最後にひとつだけ聞かせてくれないか」
キャラバンを停めてある林へ向けかけた私たちの足を、日之芽さんの声が止める。
日之芽さんは私の前に立つと、真剣な瞳でこう言った。
「この国の未来はどうなっている？」
短いが、しかし答えるのがとても難しい問いだった。
具体的にこうなる、ということを伝えることはできない。それが未来を変えてしまうことに繋がりかねないからだ。
だけど日之芽さんは、邪馬台国が
ならば──
「邪馬台国も
「その、泰平の国の名は？」
「──日出ずる国、日本」
目の前の表情が、ほどけるように和らいだ。
私たちの生きる時代が、希望に満ち溢れているものであると伝えたかった。
そして過去の人たちが紡いできた歴史を、壊させるわけにはいかない。私たちは守るために、これからも戦う。
「日本。良い響きだ。天照大神の御光が、君たちの世までもをずっと照らしているのだな」
日之芽さんは──ひとりの人間として、女王として、国の未来に思いを馳せていた。
＊
「すっごくかっこよかったです！ 先輩がドリブル技で三人を一気に抜いた時なんて、鳥肌立ちましたよ！」
「もう、大げさだよ」
キャラバンへの道のりを歩く最中、天馬はずっとこんな調子だ。興奮した様子で、試合での私の動きを思い返しているようだ。
こんな風に手放しで褒められるのはくすぐったい。でも、まあ……先輩として少しはいいところを見せられたのなら、いいかな。
そんな風にして二人、列の最後尾を歩いていた時。
「──二人とも、凄いよ」
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
