792 二人でひとつ ページ35
「当然さメイア。君の強さと美しさは、一度見たら忘れられやしないよ」
しかし少年が一歩前に出て跪き、少女──メイアの手を取った。メイアは頬を染め、表情をとろけさせる。
「まぁギリスったら！ 貴方だって今日も素敵よ、そのヘアースタイル……！」
そして二人は手を繋いで、笑い合いながら去っていった。その瞳にはお互いしか映っていない。
私たちはポカンとなりながらその背中を見送った。あんなに人前でいちゃつくカップル、私たちの時代でもなかなか見かけない。
「二回戦の相手は『ギル』が出てきましたね」
「あの二人はメイアとギリス……フェーダの中でも一、二を争う頭脳の持ち主だ」
エイナムとアルファの会話に、顔を向ける。ああいう風な振る舞いをしていても、やはり実力は折り紙付きか。
ガンマが顎に手を当て、思案するように漏らす。
「厄介だな。奴らはフェーダが戦争で使うアイテムの開発者でもある。何を仕掛けてくるかわからない……」
加えて戦術はフェーダの中でもトップクラスだという。一回戦のザンより戦術能力は上回っている、と。
優れた戦術か。確かに力で押し切られるよりも苦戦しそうだ。
「あら、もしかして勝つ自信がなかったりしちゃいます？」
「びびってんじゃない？」
ベータとオルカが挑発するように身を乗り出した。当然ガンマはその言葉を聞き捨てるはずもなく。
「誰にものを言っているのかな？ 念のために言っておくけど、試合中僕の足を引っ張るような真似だけはしないでくれよ。勝てる試合を落としたくはないからね」
「同じこと、私もお願いしちゃおうかしら？ アルファにもね」
「答えるまでもない」
ギスギスという効果音が今にも目の前から聞こえてきそうだ。
倉間はエルドラドメンバーを親指で指し、「こいつら本当に大丈夫かよ？」と不安を漏らす。
「せめて時空最強イレブンが揃っていればなあ」
狩屋のぼやきも、理解できた。あと1ピースが揃っていれば、チームとしての戦力を一気に底上げできたはず。
そして私たちのチームには、ミキシマックスできるのが二人しかいない。エルドラド側の選手との兼ね合いもあるのだろうが。
「でも時空最強イレブンの完成まであと少しだったのに、フェイがいなくなったんじゃあ……」
「大丈夫、フェイはきっと戻ってくる！ フェイは俺たちの仲間なんだ！」
天馬が力強く信助を励ました。私たちもそれに頷く。また再び、一緒にボールを追いかけられる日を願って。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
