752 原野での決戦 ページ45
「邪馬台国女王、日ノ巫女殿。此度はこのように相まみえたこと、誠に残念至極である。聡明な女王殿は、速やかに領土を放棄し、捕虜の少女を救いたもうことと愚考していただけに」
らんらんと光る瞳がこちらを射抜いてくる。恐らく
兵に引っ立てられ、一人の少女が前に出てくる。その長い紺の髪が作るシルエットは、
少しやつれているように見えるが、拷問といったひどい目には遭っていないようだ。邪馬台国側に微かな安堵が広がるのが分かる。
「こうならば取り決め通り、蹴鞠戦──サッカーで雌雄を決したく思う。ここに控えるのは我らが誇る精鋭兵である。良き仕合ができるよう、健闘を祈らせていただく」
次に姿を現したのは、パーフェクト・カスケイド。同じ背丈、同じ表情……クローンよろしく横一列に整列し、瞬きもせず前を向いている。
私は無意識に両の拳をかたく握りしめる。
──ついに来た。やれるだけのことはやった。あとは全力でプレーするのみだ。
「我々は
レイ・ルクが述べたのに合わせ、
「狗奴国国王、
菊地彦の口角が、ぐいっと持ち上がる。それを合図にレイ・ルクがスフィアデバイスを起動させた。
フィールドメイクモードによって、草原に白線が引かれていく。兵たちはその面妖な技術に、驚愕の声を漏らした。
これで舞台は整った。ユニフォームに着替えた私たちは円になり、日之芽さんからの言葉を聞く。
「このような形で国の行く末を預けることになってしまったが──手を取り合い、幾度も障壁を乗り越えてきたのであろう君たちならば、必ず勝利できる。恐れず、存分に力を振るってくれ」
「「はいっ！！」」
心地よい緊張感が血流を巡る感覚があった。
自分の中に、今までの試合前のとはまた異なった覚悟が生まれているのだ。でも……背負うものが多かろうが少なかろうが、勝利以外の道はない。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月29日 12時
