696 新たな形態 ページ39
雷門のキャプテンは天馬だ。天馬がいてくれたから、今の雷門イレブンがある。
だけど天馬は悩んでいたのだ。キャプテンの経験を活かして見事に采配を振るう神童と太陽を、自分自身と比較して。
「天馬！ こんな時に何を言い出すぜよ？！」
「こんな時だからこそ言うんです！」
「──俺は、お前にリーダーなんて求めてないぜ」
冷静な口調でそう言ったのは倉間だった。その言葉を聞いた天馬の瞳が揺れる。
その場の全員の視線を集めながら、倉間は肩を竦めて続ける。
「リーダーなら、確かに神童の方が向いてるしな」
「倉間先輩、なんてこと言うんですか！」
影山が非難するも、その場はそれで終わった。試合開始の時刻が迫っていたのだ。
両者がポジションにつく。なおも不安そうな表情をしたままの天馬を、神童が叱咤した。
「聞け、天馬。どう思おうが、このチームのキャプテンは俺でも他の誰でもない──お前だ！ 天馬、お前がキャプテンなんだ！」
「……どうしてなんですか？ どうして俺がキャプテンなんですか？！」
この試合、キャプテンを変わってくれ──そう言い出しそうなほど、天馬の顔は悲痛だった。
自分は力不足なのではないか。そう思う気持ちは痛いほどわかる。わかるからこそ、私は天馬に軽々しく何か言うことができなかった。
「仲間割れか。モードチェンジ」
レイ・ルクの声が響く。
するとその顔面に線が走った。そうして瞳の部分が、硬質な機械の様相に変わる。レイ・ルクだけじゃない。他の選手も全員、同じような変化を遂げた。
「『ハイパーダイブモード』」
私たちは身構える。機械じみた選手たちだとは思っていたが、まさか人間じゃなかったというのか。
「ミッションに従い、この戦闘でお前達を排除する」
レイ・ルクの声は先ほどよりももっと無機質で、色がなかった。
私はひとつ、大きく深呼吸する。
考えすぎずシンプルに動け。判断に時間をかけるな。自分自身にそう言い聞かせていく。
己の身を削る必要はない。できることを積み重ねていけば、必ず活路は開く。そう信じるんだ。
──試合開始。
パーフェクト・カスケイドは早速猛攻を仕掛けてきた。白亜紀での試合の時よりさらに機械的な動きで、こちら側に切り込んでくる。
アイコンタクトも交わさない、互いの名も呼ばない。それなのにあまりにも統率が取れすぎている。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月2日 11時
