693 洞窟の最奥 ページ36
「光……」
形のいい指がさし示す先には、淡い光があった。外界からの光だろうか。私たちはそちらを目指して歩いた。
たどり着いたのは
見渡して、私たちは小さく息を呑んだ。広間にマスタードラゴンが眠っている。そしてその傍には、鳥籠のような檻に入れられた黄名子の姿があった。こちらも体を丸めて眠りについている。
「あの黒い騎士はいないようだな……」
「今のうちに助け出そう！」
神童と太陽の言葉を受け、私たちは音を立てないようにゆっくりと檻へ近づいた。
アーサー王はエクスカリバーの柄に手をかけながら進む。
「黄名子ちゃん、黄名子ちゃん……！」
葵の何度目かの呼びかけで黄名子は目を覚ました。私たちの姿を見て、嬉しそうに顔を綻ばせる。
「みんな、来てくれたの？」
「しーっ……ドラゴンが目を覚ましちゃう」
「うちを心配してくれて、感激やんね！」
手荒な真似はされていないようで、ひとまず私たちは胸を撫でおろす。
檻を破壊するべく、王が剣を鞘から抜こうとしたその時。
「アーサー王と円卓の騎士よ、待っていた」
冷ややかな声が、岩場の上から聞こえてきた。
そこにはあの久尾騎士が立っていた。黒い剣を携えて私たちを睥睨している。
「お前は……！」
「我はダークドラゴンナイト。アーサー王の王国は、やがて我が物となろう」
マスタードラゴンを操った人物──ひいてはこの物語の黒幕。
王は前に出てダークドラゴンナイトを睨みつけた。その身体から気迫がにじみ出る。
「貴様の企み、このアーサー王が砕く！」
「目覚めよ。マスタードラゴン──邪悪な我がしもべ」
ダークドラゴンナイトが腕を振ると、それに呼応するかのようにマスタードラゴンがゆっくりと身を起こした。そうして咆哮を響かせる。
「賢者の知恵を持つマスタードラゴンよ……お前は民を愛し、慈しんできたはず。どうしてしまったのだ！」
王の必死の説得も響かなかった。ドラゴンは尻尾を振り、私たちを威嚇した。
完全に正気を失っている。これでは鎮めることなど到底できそうになかった。
「マスタードラゴンよ。愚かなる騎士の肉を砕くがいい──アーサー王を抹殺せよ」
ダークドラゴンナイトの合図で、マスタードラゴンが王に攻撃を仕掛けた。爪で、尻尾で、王の身体を引き裂かんとする。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月2日 11時
