【イナクロ】君へ贈る旋律第十四楽章【神童拓人】 (ページ6)

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「だな。それにAが行くって言ってるのに、お前が行かない手はないだろう？」

隣に座っていた霧野がそう言ったので、私たちはほんの少し頬を染めた。

「じゃあ、くじ引きで決めようか」

フェイはそう言って、いつも身に着けている腕時計(のようなもの)を操作し、くじのツールを立ち上げていた。便利なものだ。

そして厳正かつ公平な抽選の結果、遊園地への切符を手にしたのは──私、クロエ、天馬、黄名子、太陽、神童、剣城、フェイの八人だった。

剣城は自分が勝手にくじ引きに組み込まれていることに抗議しかけたが、クロエと黄名子が手を取り合って喜んでいるのを見て毒気を抜かれたのか、結局何も言わなかった。

私は──表情にこそ出さなかったが、飛び上がりたいくらいの嬉しさでいっぱいだった。

みんなと遊園地に行ける。そしてその『みんな』の中には神童がいる。この事実だけでもう胸がいっぱいだ。当日は何を着て行こうか、髪型はどうしようか、今のうちから考えてしまう。

日取りは次の日曜日。

私たちは束の間の休息に、心躍らせるのだった。

＊

「おおー、さすが超人気テーマパークやんね！」

日曜日。受け付けを済ませた私たちは、遊園地内に一歩足を踏み入れた。

家族連れやカップル、そして私たちのような学生で園内は賑わっている。楽しげなBGMが、自然と心を弾ませた。

入り口近くに並んでいるのは、コーヒーカップやメリーゴーラウンドといった、誰でも楽しめるアトラクションだった。クロエと黄名子は目を輝かせ、早速どれに乗るか吟味している。

「今日くらいは、エルドラドとの戦いのことは忘れて楽しむか」

神童の言葉に、みんなが頷いた。

私たちはなんといっても、遊びたい盛りの中学生。遊園地が楽しみじゃない理由はどこにもなかった。

それから私たちは色んな乗り物にチャレンジした。

コーヒーカップでは天馬が勢いよく回しすぎて、一緒のカップに乗っていたフェイが目を回したり。

ジェットコースターでは、滅多に聞けない神童の絶叫を聞けたり。

ストラックアウトでは剣城が百発百中の命中を誇る意外な才能を見せたり。

常に笑いが絶えない時間は、まるで夢のようだった。

私は一瞬一瞬を逃すまいと、携帯でたくさん写真を撮っていった。茜ほどの撮影の腕はないけれど、それでも切り取られたみんなの笑顔は、はちきれんばかりに輝いていた。