44 未知の力 ページ44
試合再開。神童と天馬、信助以外のメンバーは依然として棒立ちのまま。
予想だにしていなかった雷門の先制点に、天河原側も本気を出してきたようだった。
相手選手の強引なチャージに、神童の身体が吹き飛ばされる。
「神童！」
「しんサマ……！」
咄嗟に呼んだ名が、山菜さんの声と重なる。
他のメンバーも続々とラフプレーの嵐を受け、尻もちをつき、転んでいく。
「ディフェンスラインを下げるぞ！」
猛攻を受け、神童が指示を出すが──誰も動かない。
味方についてくれない雷門の八人と、敵の十一人。
やはり三人だけで戦うのは無謀だったか……？
神童が天河原選手の前に立ち塞がる。
が、しかし。選手の背中から、突如として黒いオーラが出現した。
「いでよ、我が化身──『鳥人ファルコ』！」
それは勢いよく吹き上がり──はっきりとその姿を現した。
あれが、化身。実際にその姿を見るのは初めてだった。
なんという気迫、存在感。フィールドがまるごと呑み込まれたようだ。
「『ファルコ・ウィング』！」
空中から繰り出されたシュート。
神童も化身で応戦しようとしたが、一歩遅かった。為す術なく吹き飛ばされてしまう。
そして──シュートは三国さんの身体ごと、ゴールネットに突き刺さった。
同点。1-1。
そこで前半終了のホイッスルが鳴った。
＊
「あﾞーっ、イライラする！ 何なんだよどいつもこいつも！」
女子トイレ内。
水鳥がそう叫びながら地団駄を踏んでいる。
「水鳥ちゃん、落ち着いて」
「茜はムカつかねえのかよ！ あいつら天馬たちの必死なプレー見ても、誰も動きやしねえ！」
私は二人のやり取りを、鏡越しにぼんやりと眺めていた。
勝つためにはやはり、化身の力が必要なのだろうか。神童はまだ力を使いこなせていない。
決定的な突破口は、勝機はどこだ。せめて雷門側のあと一人が動いてくれれば──
「A先輩？ どうかしましたか」
空野さんに呼びかけられ、顔を上げる。
……ああそうだ。フィールドでがむしゃらにプレーする選手がいるっていうのに、マネージャーが暗い顔をしていてどうする。
「いや……大丈夫」
言って、両手で自分の頬を叩く。スパン、と小気味いい音。ヒリヒリとした痛みが、目を覚まさせてくれた。
無理やりにでも信じるんだ。後ろ向きになるな。きっと大丈夫だ。
そう──なんとかなるさ。
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キメラ(プロフ) - 充滞さん» 充滞さん、コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても光栄です、励みになります！ マイペース更新ですが見守っていただけると嬉しいです。 (2022年5月24日 21時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - キャラがとても公式よりで、とてもドキドキしました！主人公が抱く神童への劣等感、羨望を感じます。木から落ちる主人公を剣城が受け止めるシーンにときめきました。この小説を作ってくださりありがとうございます (2022年5月23日 11時) (レス) @page49 id: 7d360b94a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2022年2月3日 23時
