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17 嬉しい加入 ページ17

しかし本当に今考えるべきなのは、私のつまらない意地なんかではなく、雷門サッカー部のことだ。

終学活を終えて、気持ちをどうにか切り替えてから部室へ向かう。


──いつもの練習メニューをするなら、すぐにラインを引いた方がいいか。ドリンク作りは藤井さんと遠藤さんに任せて、私はフィールド整備をしなければ。

そこまで考えて立ち止まる。そうか、もうみんないないんだ。おまけに今日は入部テストじゃないか。

小さく溜息をつく。なんだかんだ私も疲れているみたいだった。


余計なことを考えないよう、小走りで向かい──サッカー棟前に誰かがいるのに気がついて立ち止まる。音無先生と、一人の女子生徒。リボンの色を見るに新入生だろうか。


「音無先生」

「あ、Aさん! 嬉しいお知らせよ。彼女、マネージャー志望なんですって」


近づいていって、かけられた言葉にぎょっとする。マネージャー? そう言ったのか。

女子生徒が一歩前に出てくる。快活そうなその顔を見て、私はやっと思い出した。


「ああ、昨日の……?」


松風と一緒にいた、ショートカットの女子だ。その子は顔を期待に輝かせ、ぺこりとお辞儀する。


「はい! 空野葵といいます! よろしくお願いします!」

「えっと、こちらこそ。私は二年生のAA」


突然の展開にしどろもどろしてしまう。

──後輩。マネージャー。私一人じゃない。

心に空いていた穴が塞がっていくような気がした。


すると、隣からシャッター音らしきものが聞こえてきた。

驚いて振り向くと、そこにはカメラを手に持った二年生の女子がいた。栗色の髪を三つ編みにして、穏やかに笑っている。


「私、山菜茜。よろしくね、葵ちゃん、Aちゃん」

「彼女もマネージャー志望みたいなの。色々教えてあげてね、Aさん」


「はい」と機械的に返事してから、遅れてじわじわと暖かな気持ちが込み上げてくる。

照れくさいような、こそばゆいような。選手ももちろん増えてほしいけど、やっぱりマネージャーの立場からしたら、マネージャーが来てくれるのは、なんというか純粋に嬉しい。


「とりあえず……もうすぐテスト始まるから、一緒に第二グラウンド行こうか」

「はあい」

「はい、A先輩!」


二人の眩しい笑顔に、私の頬もほんの少し緩む。

先輩。先輩か。

グラウンドへ向かう足取りは、自分でもわかるくらい軽くなっていた。

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キメラ(プロフ) - 充滞さん» 充滞さん、コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても光栄です、励みになります! マイペース更新ですが見守っていただけると嬉しいです。 (2022年5月24日 21時) (レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - キャラがとても公式よりで、とてもドキドキしました!主人公が抱く神童への劣等感、羨望を感じます。木から落ちる主人公を剣城が受け止めるシーンにときめきました。この小説を作ってくださりありがとうございます (2022年5月23日 11時) (レス) @page49 id: 7d360b94a4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:キメラ | 作成日時:2022年2月3日 23時

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