15 のしかかる重責 ページ15
「わかっているのか？！ 雷門のユニフォームだぞ！」
「俺はフィフスセクターの監視者だ。お前らごときとは違う」
お前らごとき。その言葉に、場が凍りついた。
「剣城──！」
「やめろ、神童！」
拳を振り上げた神童を、三国さんが鋭く制す。
一触即発。張り詰められた糸を彷彿とさせるような雰囲気が広がっていた。
やがて理事長と剣城が立ち去ると、場には重苦しい沈黙だけが残った。
誰もが何も言わない中、私は放られて乱れたユニフォームを手に取り、畳む。
無言で神童に差し出せば、「ありがとう」と小さい声と共に受け取ってくれた。
渡す時に指が少し触れる。怒りからか悔しさからか、その手はまだ震えていた。
＊
中庭に張り出された新クラスの名簿前は、多くの生徒でごった返している。今年も一緒だねと手を取り合う女子たち、引き離されたと嘆く男子たち。反応は様々だ。
背伸びしてなんとか自分の名前を見つけ出し、さっさと教室に向かう。人混みは得意じゃないのだ。
浮き足立った雰囲気の教室に足を踏み入れ、最初に話しかけてきたのは霧野だった。他のクラスメイトの名前をよく確認せずに来たから驚いたけど、同じ組だったようだ。
「A。おはよう」
「おはよ」
女子の視線がちらほらこちらに──正確には霧野に向けられている。二年になっても相変わらず女子人気は高いようだ。
「浜野と速水と倉間、一緒の組になれたらしいぞ」
「いつもの三人？ よかったね」
同じ部員同士でも結構固められるものなんだな。
と──霧野の後ろから神童が顔を出した。
「神童！ 今年は俺たち同じクラスだな。よろしく」
「ああ、よろしく。Aも……」
「うん。こちらこそ」
神童は鞄だけ机に置くと、すぐ教室から出ていった。
一目見ただけで丸わかりだ。眉間にシワが寄っていて、唇は固く引き結ばれていて──
「明らかに思い詰めてる顔してた」
「ああ。サッカー部が心配なのはあいつだけじゃないんだけどな」
キャプテンとして部を立て直す。その重責を一人で抱え込んでいるように見えた。
今回に限って言うと、強すぎる責任感が足枷となってしまっているようだ。
「Aも、神童のこと気にかけてやってくれないか」
「私が？」
「ああ。無理しすぎるなってマネージャーの立場からも言ってやった方がいい」
霧野の言葉に素直に頷く。
でもあの性格だと、結局自分の気持ちに蹴りが着くまでずっと悶々と悩んでそうな気もするけれど。
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キメラ(プロフ) - 充滞さん» 充滞さん、コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても光栄です、励みになります！ マイペース更新ですが見守っていただけると嬉しいです。 (2022年5月24日 21時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - キャラがとても公式よりで、とてもドキドキしました！主人公が抱く神童への劣等感、羨望を感じます。木から落ちる主人公を剣城が受け止めるシーンにときめきました。この小説を作ってくださりありがとうございます (2022年5月23日 11時) (レス) @page49 id: 7d360b94a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2022年2月3日 23時
