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23 静かな決意 ページ23

「そういうわけにもいかない。俺はキャプテンだから」


ともすれば無視されるかとも思ったが、神童は昨日と全く同じようなことを言った。


「俺が、サッカー部を守らなくちゃいけないんだ」

「部が心配なのは神童だけじゃない」


反射的に頭に浮かんだことを言ってしまって──少しだけ後悔する。

今のは霧野の言ってたことをそっくりそのまま真似ただけだ。私の言葉じゃない。

しかし神童は驚愕した様子でこちらに顔を向けてきた。まともに視線が合ってしまって、すぐに逸らす。


「……何?」

「Aがそんな風に言ってくれるなんてな」

「なんで?」

「なんで、って……Aは、俺とあまり話したくないんだろうと思ってたんだ」


──心臓が大きく音を立て、動悸を打った気がした。

まともに図星を突かれて、咄嗟に言葉を継げなくなる。一秒、二秒。無言の時間が長くなればなるほど、焦りが大きくなる。

バレていた。いや、一年間同じ部員として付き合っていれば否が応でもわかるだろう。目を合わせないように、必要最低限しか話さないように……そうやって接してきたのだ。

劣等感を隠すために。ずっと目を背けて。


「心配してくれてありがとう」


無言の間は肯定の意思として受け取られたようで、神童のその一言で会話は終わった。


嗚呼、このままじゃダメだ。漠然とした思いが、強烈に実態を伴って胸の奥底に着地する。

自分の気持ちに、何かしらの形で蹴りをつけなければならない。そうしないと──ずっとうじうじと下を向いたままで、自分が苦しいだけだ。





「じゃあ……今からマネージャーの仕事を教えるから」


第二グラウンド。練習が始まったフィールドを背に、私は三人にそう言った。


「はい! よろしくお願いします」

「お願いします」


三人。空野さんと山菜さんと──


「水鳥も。面倒かもだけど、最低限のことは覚えといて」

「あぁ? かったりーなあ」


かったるいと言いつつも、一応こっちに来てくれた。

戦力は多い方がいい。それはマネージャーでも同じこと。


ドリンク作り、洗濯、タオルの準備。

とりあえずすぐに覚えてほしい仕事と簡単な仕事を優先的に教えていったが、それでも時間はあっという間に過ぎていった。


多分、今までの部活の中で一番喋ったと思う。

音無先生からのフォローをちょくちょく受けながらだったが、とりあえず初日はつつがなく終えることができた。

24 ひたむきな愛情→←22 不器用な優しさ



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キメラ(プロフ) - 充滞さん» 充滞さん、コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても光栄です、励みになります! マイペース更新ですが見守っていただけると嬉しいです。 (2022年5月24日 21時) (レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - キャラがとても公式よりで、とてもドキドキしました!主人公が抱く神童への劣等感、羨望を感じます。木から落ちる主人公を剣城が受け止めるシーンにときめきました。この小説を作ってくださりありがとうございます (2022年5月23日 11時) (レス) @page49 id: 7d360b94a4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:キメラ | 作成日時:2022年2月3日 23時

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