検索窓
今日:5 hit、昨日:23 hit、合計:44,362 hit

21 遠い和睦 ページ21

翌日、放課後。

練習の前に、とりあえず部員たちの自己紹介をすることになった。

私は二、三年生の列の端っこに並ぶ。


「よし、まずはお前からだ天馬! ビシッと決めろ」


何気に新入部員側に並んでいた水鳥が、松風の背中を叩いた。

昨日はただの野次馬をしにきたと思っていたのに、入部してしまうのか。


「貴方は……? マネージャー志望かしら?」


同じように疑問に思ったのだろう、音無先生が首を傾げる。


「そんな面倒なことはやんねーよ。まあなんつーの、コイツの私設応援団って感じ」


昨日言ってたことと全く同じことを言ってのけた。

まあでも、一応肩書きはマネージャーになりそうだし……ついでにまとめて仕事を教えちゃってもいいか。本人が聞く耳を持ってくれればの話だけど。


「でもあたしのことは気にしなくていーから……ほれ」


水鳥は再び、松風を前へ押し出す。どうしてもトップバッターにさせたいらしい。

本人は私たち上級生の視線を受けて、ガチガチに緊張しているようだった。まあ無理もない。


「松風天馬一年ですっ! ……と、とにかくサッカー大好きなので、よろしくお願いします!」

「西園信助、一年です! 小学校ではディフェンダーをやってました。頑張りますので、よろしくお願いします!」


途中詰まりながらも、なんとか言い終えた松風。危なげなく堂々と言い終えた西園。

──ディフェンダーだったのか、西園。昨日のテストでも高いジャンプ力が垣間見えていたから、それを活かせるかどうか、というところだろう。


「次……」


神童が促す。その視線の先には、壁にもたれて腕を組んだ剣城。


「おい、次だ! 聞こえねえのかよ!」

「──剣城京介」


車田さんの怒号も意に介さない様子で、不敵に笑いながらそれだけ言う。


「もうダメだ、あんなやつが入ってきて……やっぱり俺達のこと潰しに来たのかな」

「そうじゃね?」

「ちょっと、浜野……」


隣で交わされる、速水と浜野の不穏な会話に思わず割り込む。

冗談のつもりなのだろうが、さらっとそんなことを言われたらこっちも気が気じゃない。


「Aはどう思う?」

「どう、って……今すぐ潰されるってことはさすがにないだろうけど」

「遅かれ早かれ同じことです。もう終わりだ……」


速水の顔にどんどん翳りが差していく。

私は浜野と顔を見合わせ、こっそり肩をすくめた。

22 不器用な優しさ→←20 祝福の風



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (48 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
104人がお気に入り
設定タグ:イナGO , 神童拓人 , 原作沿い
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

キメラ(プロフ) - 充滞さん» 充滞さん、コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても光栄です、励みになります! マイペース更新ですが見守っていただけると嬉しいです。 (2022年5月24日 21時) (レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - キャラがとても公式よりで、とてもドキドキしました!主人公が抱く神童への劣等感、羨望を感じます。木から落ちる主人公を剣城が受け止めるシーンにときめきました。この小説を作ってくださりありがとうございます (2022年5月23日 11時) (レス) @page49 id: 7d360b94a4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:キメラ | 作成日時:2022年2月3日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。