× ページ11
不愉快さばかりが造形のいい顔から滲み出ている。
この館に入ってからどれぐらい経っただろうか。二時間?三時間?それよりももっと経った?
視界の隅に映った時計を見ても、その時計は変な形をしていてとても読めたものではない。
「おいコラ余所見すんなや」
「……ごめんなさい、」
少し目を逸らしただけで、更に眉根に皺が刻まれる。私を見下ろす冷たい瞳は、美しいトパーズのように見えるのに、温かさが違う。
氷のような、刺すような瞳が心を傷める。
何故そこまで人間を嫌うの?
何故そこまで人間を見下すの?
そう問いたいのに、言葉が何も出て来なかった。
「…つか何なんこの格好」
「ぱ、パンプキンです」
「…………へぇ?」
意味ありげな笑みを浮かべて、私の後ろ頭をグイ、と思い切り近付ける。
「ヒッ、」
「…そそる香りしてんなぁ」
スン、と首筋の所で何かを嗅ぐ音が聞こえた。
待って、嫌だ、やめて。
そう言いたいのに萎縮しすぎて、私の口からは何も出てこない。奥歯がガチガチと鳴る音が出ていくだけで。
「パンプキン、ってことは食べられるやろ?俺らが食うてやるから安心してくださいねぇ」
「ぁ、や、」
「ビクビク震えて、それがそそられるとも知らへんでやってんの?せやけどほかの3人には会ってるはずやから知ってるよな?」
──嫌がる顔が1番の加虐材料や、って。
ジジジ、と脇腹辺りに付いているファスナーが下ろされる音が聞こえて、手を伸ばそうとする。
だが、それにいち早く気付いた黄色い吸血鬼が私の両手をいとも簡単に片手で掴み上げる。
そのまま、沢山の書物が積まれている机に身体を押し付けられて、いよいよ抵抗する術は無くなっていた。
「やだ、やだやだやだやだ、」
「うるせぇ。黙れ」
寒い、寒い寒い。
怖くて、寒くて、何が何か分からなくて。
人間を毛嫌いしているはずの吸血鬼は、悦に浸るような笑みを浮かべている。
脇腹を何かがするりと滑る感覚が走ったので、ピクリと肩が揺れた。
「はっ、人間ってホンマに快楽に弱いんやなぁ」
「っう、」
ただ机に押し倒されて、為す術もない私には今、吸血鬼が何をしようとしているかなんて分からなかった。
「声出すなや、人間」
「ひぃ“ッ」
瞬間、脇腹を刺されたかのような痛みが広がった。
1327人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこ - 終わってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます! (2021年6月8日 18時) (レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - 皇咲鈴音さん» びっくりしました誰かと思いました笑 みかんさんありがとうございます!本当嬉しいです大好きです(;;) (2020年10月28日 23時) (レス) id: 9beb0497a0 (このIDを非表示/違反報告)
皇咲鈴音(プロフ) - すごい名前になってますがTwitterのみかんです( めっちゃめっちゃ内容好きです!! (2020年10月28日 22時) (レス) id: 72e21fad30 (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃ(プロフ) - 物語の構成が好みすぎました!!更新おまちしております!!! (2020年3月27日 16時) (レス) id: c45d7c6a24 (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - nanaseさん» そのように言って頂き嬉しいです…!コメントありがとうございます!更新頑張ります…! (2020年3月8日 6時) (レス) id: 7dc015f2ad (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鎖座波 | 作者ホームページ:もう既に血が足りない
作成日時:2019年10月19日 15時