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「ヨォ、体調は如何だ?」

ガチャっと扉を開ける音と共に訪問者は部屋に入ってきた。
見慣れた橙色の神と黒い帽子。そう、紛れもなく中也だ。

熱で朦朧とした意識で捉えた中也の手には鍋の様なものが有り、其れは湯気を上げている様子から、先程作られたばかりの物なのだと判る。

『…其れ…』

「あ?…嗚呼、白粥だ。俺が今さっき作ったから、味は保証しねぇぞ」

わざわざ忙しいのに作ってくれたのだと判り、私はつい頬が緩んでしまった。

『…有難う』

無意識に笑った私の顔を見て、中也は「おう」とそっぽを向き乍ら応えた。

中原中也と云う男は世話焼きな奴だ。誰か部下が困ってれば助けてしまうくらいには。
朝から熱でふらついていた私は、そんな世話焼きな幹部にバレて、仕事の合間にこうやって看病してもらっている。

正直、かなり熱があったから助かった。もう余り体が云う事を聞いてくれない状態だ。 今こうやって寝台から起き上がるのも漸と。中也から器を受け取ろうと腕を伸ばすが、頭がボーッとして上手く力が入らない。

「良いから、口開けてろ」

そんな様子に見兼ねた中也は寝台の側にしゃがみ、匙で白粥を掬うとふぅふぅと息を吹きかけてから私の口に入れた。朝から食べていなかった私の体に、程よい塩加減の白粥が染み渡る。お粥ってこんな美味しいものだったか。

『…美味しい』

そう呟くと、中也は「そうか」と笑い、食べさせた匙で再びお粥を一掬いし、また息を吹きかけて私の口へと運んだ。





『御馳走様でした』

食欲が無かった筈なのに、鍋一杯にあった白粥を全て食べる事が出来た。

「意外と食欲はあんのな」

空になった鍋を見て驚いた様に、でも何処か可笑しいのか笑う中也に、胸がキュッとなった感覚がした。

。→←う



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りん(プロフ) - この作品、何度読んでも良いです。泣けます。 (2018年5月30日 23時) (レス) id: 0f68341c00 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:豆猫 | 作成日時:2018年3月14日 7時

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