58.元人形の思い ページ8
Aside
「時の糸で飾られた人形の住処は〜♪」
昔良く聞いていた思い出の曲で気付いたら俺は舞台に立っていた。
「砂時計の砂の上、美しきMUSEUM〜♪」
ひとつひとつ腕の角度やターンするときの足の角度…あの頃を思い出しながら丁寧にやった。
「ショウケースの鍵が〜♪」
お師さん、なずにぃ、みかの声を聞くと懐かしかった。
『錆び付いてしまって、壊れていたことにさえ〜♪』
ずっとずっと恋しかった。ある日突然終わった俺の人形生活がまた戻ってきたような感じ…だけど少し違う…
「気付かずにいた」
「「「『留めていた時間は〜』」」」
今ここに立っていることが、またこの衣装を着れていることが全て"奇跡"みたいだった。
あの日全てが壊れたはずなのに……
視界がどんどん滲んでついには何も見えなくなったかと思えば目から溢れていき頬を伝い落ちていくものを見つけた。
「(来てくれたんや)」
「(人形たちばかりに働かせていると思われたら人形師の名折れだからね)」
「(お師さん)」
「(斎宮…俺「(黙りたまえ！)」！！)」
「(ここは舞台上…偉大なる芸術の場なのだよ。言葉など不要そうじゃないのかね？______)」
息がしづらい…。あの日俺が全てを壊したのにまたそれが戻ろうとしている。
いや、全てではなかったにしろ今さらここで踊り歌っている自分に嫌気がさした。
気付くと俺は嗤っていた。
本当にどうにかなりそうだ。
最近は家族との距離が近くなってきたような気もしなくもないがValkyrieとも近い気がする。
手放したはずのものが今さら手に入るなんて気持ち悪かった___
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作者名：朔-さく- | 作成日時：2020年10月20日 0時
