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「…文化祭が終われば帰ってきてくれると思うてたわ
なあ、…もう崇裕くんは来うへんよ、なんで待ってるん、誰を待ってるん、」
ギリギリと、爪が皮膚に食い込むほど重岡くんは拳を強く握りしめ、
目は閉じたまま言葉を続けた
ドアに背をつける彼と、真ん中で床に座り込む私
その間に流れる空気は重たく、静かに流れている
「…誰も待ってないよ」
「じゃあなんでここに来るん」
「ここが好きだからかな、」
「嘘吐くなや、…なあ、もうやめとけって、
崇裕くんはここには来ないし、宮下さんの事だってッ…、」
顔を背けて目を開いても、重岡くんは頰の筋肉を揺らして怒っていた
それは私に対しての怒りではなく、霤沈菁擇悗療椶
私だってわかってた、それでもそれを受け入れたくなかった
重岡くんは優しいから、私にもずっとそれを言わないでくれた
それでももう彼も限界だったようで、私に横顔を見せながら言いかけたその先の言葉を飲み込んでいた
「…いいよ、言ってやってよ、
私はただの妹さんの代わりだった、って」
「…気付いてたん、」
「馬鹿みたいでしょ、それでも好きなんだもん
霤沈菁擇私の名前を呼びながら抱き寄せてくれたって、キスをしてくれたって、
きっとその目から見えてたのは妹さん、心で想ってたのも妹さん
けどね、先輩それに気付いてないの
無意識なんだよ全部、ここへ来てたのも残像を求めてたんだって、私に気が付いたらキスをしてるのも妹さんと重ねてるからだって、
全部、先輩は気付いてないの」
重岡くんは頰を引きつらせて、ようやく私を見てくれた
ふらついた足取りで私に近づき、崩れ落ちるように目の前に彼も座り込んだ
酷く疲れたような顔、手を伸ばしてその頰に触れれば伏せた目をゆっくり開いて私を見つめた
「…許さへん、崇裕くん」
「先輩は悪くないよ、私はそれでも幸せだったの」
「そんなのおかしいやんかっ、宮下さん、おかしいって」
「そうだね、私がおかしいのかも」
「…なんでキスさせたん、なんで拒まへんねん、
好きだから?好きだったら、そこに愛がなくても良かったんか」
「良かったんだよ、だって私嬉しかったもん」
私のその言葉に彼は目つきを変えた
私の肩を強く掴み、そのまま床に押し付け上に跨る
痛くないのは彼の優しさ
抵抗しない私に重岡くんは眉間に皺を寄せていた
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なあちゃむ(プロフ) - コメントの返信ありがとうございました!桜さんの作品は自分の頭の中で映画のように綺麗に想像することができるので本当に素晴らしいです。桜さんの作品、すべて読ませていただきました。どれも素敵で、読み直した作品もあります。これからも更新楽しみに待ってます。 (2016年8月10日 8時) (レス) id: 525c05de2b (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - なあちゃむさん» 「また明日」っての方でもありがとうございます、とても嬉しいです、読んでくださる方の脳内で映像化されるような情景描写、美しく綺麗な世界になるように心掛けております、なのでお言葉とても嬉しく自信になります!書いてて良かったです、本当にありがとうございます (2016年8月1日 10時) (レス) id: 3a95ea47e4 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 怜奈 桃ジャス民さん» 順調に進んでおられて良かったです、わかりました、応援していますね(^^) (2016年8月1日 10時) (レス) id: 3a95ea47e4 (このIDを非表示/違反報告)
なあちゃむ(プロフ) - 読んでいてその風景を思い浮かべることができました。ストーリーも本当に素晴らしくて、占ツクを読んで泣いたのは春紫苑が初めてです。本当に素敵なお話でした。また読み返します。 (2016年7月26日 17時) (レス) id: 525c05de2b (このIDを非表示/違反報告)
なあちゃむ(プロフ) - コメント失礼致します。初めまして、友達がオススメしているのを聞いて、久しぶりに占ツクにログインして春紫苑を読みました。私が期待していたイメージを遥かに超えて本当に素敵な作品でした。情景描写の美しさ、メンバーのキャラクター、すべてがイメージとぴったりで (2016年7月26日 17時) (レス) id: 525c05de2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜 | 作成日時:2016年6月21日 1時