◇2 ページ2
.
高校はあっくんのいるところに受験した
彼がいるだけで安心できると、両親も何も反対しなかった
入学式の時も、登校しなくていい日なはずなのに、
新品の制服を着て外に出れば、隣の家の表札等が付けられた細長いブロック塀に凭れかかるあっくんがいて、
驚いて近寄れば「似合うてるやん」と優しく笑っていた
「今日入学式だよ？」
「ええやん、道案内したる」
「昨年文化祭も行ったよ、説明会だって受験しにだって、」
「うるさいなぁ、Aの初登校なんやし一緒に行きたいなっちゅう単なる俺の我儘やん？…ほら行くでっ！」
制服のままサッカーしたり、バスケをしたりするあっくんは他の人に比べて着古されてるかのような制服になっていて
入学式だから鞄も持たずにあっくんは携帯とお財布だけをポケットに入れ、
自分の言葉に顔を赤くしながら乱暴に後ろ髪を掻き、私に背を向けて歩き出す
慌ててその後を追い、目の前を歩く大きな背中に抱き着いた
「うわっ！」
「はははっ、走れー！あっくんいけーっ！」
「ちょっ、このまま？！」
「ねえっあっくんって案外背が高いんだね！凄く良い景色！」
「案外ってなんやねんっ、見るからに少しは大きい方やろ
ってかいつもの景色やん、何も変わらへんわ」
「変わるんですー！ほらほら、空が近いよ！」
「はははっアホかお前っ」
そんなことを言いながらも、いつもあっくんは背中に抱き着く私を拒む事なく両手で足を支えてくれて、
そのまま背負いながら歩いてくれる
あっくんにおんぶされるのが中学生の頃から大好きだった
兄のようなあっくんのその落ち着く大きな背中が、
私は大好きだった
あっくんの肩に左手を置き、右手を空高くに伸ばしてみれば彼が「アホか」と言って笑うから、
そんなあっくんの頭を軽く叩けば「いった！何すんねんっ！」と少し怒るけど、
あっくんはすぐに声をあげて笑う、この時間が楽しかった
「あっくんっ、入学早々遅刻しちゃうっ！」
「はぁ〜？ああもうっ、走るからなっ！落ちんなよ絶対っ！」
私には兄弟がいなかったから尚更あっくんは兄のようで、
家族ぐるみで仲良しで、中学生の頃も、
“恋人”というよりかは“親戚”だと思われていたくらい
そんなあっくんと向かった、これから通う新しい場所
先輩と出会った、かけがえのない場所
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1629人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なあちゃむ(プロフ) - コメントの返信ありがとうございました！桜さんの作品は自分の頭の中で映画のように綺麗に想像することができるので本当に素晴らしいです。桜さんの作品、すべて読ませていただきました。どれも素敵で、読み直した作品もあります。これからも更新楽しみに待ってます。 (2016年8月10日 8時) (
レス) id: 525c05de2b (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - なあちゃむさん» 「また明日」っての方でもありがとうございます、とても嬉しいです、読んでくださる方の脳内で映像化されるような情景描写、美しく綺麗な世界になるように心掛けております、なのでお言葉とても嬉しく自信になります！書いてて良かったです、本当にありがとうございます (2016年8月1日 10時) (レス) id: 3a95ea47e4 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 怜奈 桃ジャス民さん» 順調に進んでおられて良かったです、わかりました、応援していますね(^^) (2016年8月1日 10時) (レス) id: 3a95ea47e4 (このIDを非表示/違反報告)
なあちゃむ(プロフ) - 読んでいてその風景を思い浮かべることができました。ストーリーも本当に素晴らしくて、占ツクを読んで泣いたのは春紫苑が初めてです。本当に素敵なお話でした。また読み返します。 (2016年7月26日 17時) (レス) id: 525c05de2b (このIDを非表示/違反報告)
なあちゃむ(プロフ) - コメント失礼致します。初めまして、友達がオススメしているのを聞いて、久しぶりに占ツクにログインして春紫苑を読みました。私が期待していたイメージを遥かに超えて本当に素敵な作品でした。情景描写の美しさ、メンバーのキャラクター、すべてがイメージとぴったりで (2016年7月26日 17時) (レス) id: 525c05de2b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桜
| 作成日時：2016年6月21日 1時
