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大学生になってから、大ちゃんは大学終わりに寄り道する事が多くなった
きっと彼は家に帰りたくないのだろう
一人にするのは気が引けて、私も大人しくその後ろをついて歩いている
何故帰りたくないのかはわからない
帰りたくないのが本当の理由かも定かではないから、軽々しく断定してはいけない気もしていた
けど彼は時々言葉に漏らすのだ
「Aと居る時が、やっぱり一番落ち着くな」と
我が家を目の前にして、そう呟くのだ
「なあ、Aは覚えてる？
高校の卒業式の時、俺珍しく寝てなかったんよ
それはAもおんなじでさ、笑ったよな
最後の最後で真面目になるんやな、俺達、って」
まだ半分は残っている紅茶を猫のように少しずつ飲みながら、
大ちゃんは目線を合わせることなく言葉を紡いだ
「覚えてるよ」と、私は彼の伏せた目を見つめながら呟いた
「そっか」と、彼も小さく、言葉を零す
「あの日から俺、講義中も寝なくなった」
「偉いね、ほんまに真面目になったんや」
「なんか知らんけど、寝たらあかん寝たらあかんって、
勝手に自分と闘ってんねん
けどな、今日、初めて寝てもうた」
Aも見てたよな、と、
大ちゃんは寂しそうに笑ってまた目を伏せている
ここ最近、いや、いつからだろうか
あまり彼と、視線が合わなくなった気がしていた
大ちゃんの真っ直ぐで黒目がちな瞳が、私は時々恋しくなる
「あの時寝てたんやね、大ちゃん」
「疲れてたんかな、昨日剣道の練習試合やってん」
大ちゃんは本当に、嘘が下手くそだと思う
彼はその講義中、少しも寝ていなかったはずなのだ
隣の席で不規則に上下する背中を私は見つめていたのだから
すぐに嘘だとわかってしまうことが悲しくて、
私はただ素直に、「お疲れ様」と、彼のその嘘を受け入れた
『 星の王子さま 』
教授の好きな本をテーマに進んだ講義は、
大ちゃんにとってはあまりにも苦しいものだったのだろう
眉間に皺を寄せながら机に伏せてしまった彼を横目に、
私は穏やかな気持ちで笑っていた
何処か優しい想いになれたのは、記憶の奥底に仕舞い込んだ流れる星を微かに思い出したからなのだろう
繋がりはなくとも、ほんの僅かな星の欠片に触れるだけで私の心は落ち着いた
そんな些細な事でやはり彼は私の心の拠り所なのだと再確認し、
私は自然と笑みが零れてしまったのだ
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桃子(プロフ) - 桜さんの作品が何年経っても大好きです。いつかまた藤井くんに会えたら嬉しいです。 (9月28日 22時) (
レス) @page9 id: 775802b2fa (このIDを非表示/違反報告)
セミマル(プロフ) - 初めまして。素敵な作品をありがとうございます。私も更新楽しみにしています。 (2023年4月10日 23時) (レス) id: 039923312a (このIDを非表示/違反報告)
きい - 初めまして。いつか続きが更新されることを願っています。 (2022年8月22日 7時) (レス) id: a320cf1b5c (このIDを非表示/違反報告)
ここ - はじめまして。この物語を止めてしまうのは惜しすぎます。私たちにとって価値ある作品です。私は何年も待ちます。 (2022年4月1日 8時) (レス) @page9 id: 4cb3a32bb7 (このIDを非表示/違反報告)
#moo(プロフ) - 初めまして。いつか続きが読める日まで、私も頑張ります。 (2022年2月24日 8時) (レス) @page9 id: 209c66b3b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜
| 作成日時：2017年8月14日 23時
