色 々 顔 《赤》 第二章

◇50 ページ10

.





高校の入学式には照史くんも来てくれた


高校だからか来てない保護者の方が多かった気もするけど、


初めて入学式に“親”が来てくれたことが俺は嬉しくて、


捌ける時に照史くんを見つけては、思わず笑みが溢れてしまって、


それをみた照史くんも嬉しそうにニコッと笑って、


一眼レフに指を当て、片目を閉じてシャッターを切った







こうやって写真を撮ってもらったことも初めてなんや〜なんて照史くんに話したら、


きっと彼は自分の事のように悲しみ眉を下げ、


何も言わずに頭を撫でてくれるのだろう







見慣れない教室に、見慣れないクラスメイト、


お葬式のように静かな教室内に息を飲みながら、


俺も空気を読んでじっと席に座ってた





担任のせんせーが来て、クラス全員の自己紹介を終えたら今後の高校生活の色々な説明を受けて、


少しずつクラスの空気も和み、帰る頃には周りの子達とはもう話せるようになった


「重岡くんの笑顔は素敵やな」ってたくさんの人から言ってもらえて、


初めて自分の中で好きなところができた








「入学式の時に重岡くんの写真撮ってたのってお兄ちゃん？」








帰ろうとした時に、そうクラスの女の子に聞かれた


「あー、」と言葉を詰まらせたのは、なんて答えたら良いのかわからなかったから


“親代り”となってくれてる照史くんは、実際のところ“兄”という方がしっくりくるのかと、


その女の子の言葉で気づかされた









「…おん、そやで、

照史くんかっこええやろ、俺大っ好きやねんっ！」









夢中になってそう言えば、女の子もその周りにいた他のクラスメイトも「仲良えんやなあ！」と優しく笑ってくれて、


ああ、俺新しいところにきても大丈夫そうやとホッと息が漏れた






レベルの高い高校だけど、みんなフレンドリーですぐ仲良くなれて、


高校生活も楽しくて仕方がなかった


授業もついていけるどころか、教え方が上手で楽しくてたまらなくて、


受験させてくれた、高校に行かせてくれた照史くんに何度も「ありがとう」を伝えた







クラスのムードメーカー






俺はそういう立ち位置になれた


友達も多くできたけど、神山に会うとやっぱりコイツやなぁって思ったり、


何事もなく、平和に毎日を過ごせていた








.

◇51→←◇49

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す