色 々 顔 《赤》 第二章

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そのあと�霤沈菁擇�来て、私は二人とお別れし、


家に帰って、重岡くんのクラスでやる最後の授業に向けての準備を始めた


彼は携帯を持っていないから、声が聞きたくなったら会いに行かなくてはならない


それもそれで素敵だなぁと思う


現代の子達は便利なものに恵まれているから、こういう時すぐに電話ができるけど、


彼を好きになるとそれができないから、尚更“会いたい”という気持ちでいっぱいになる







その為か、その日はいつもより早く眠り、いつもより早く学校に来ていた


職員室に向かう途中、見えたのは微かに開く図書室の扉


ドクドクと脈打つ心臓に息を殺してそこへ近づけば、


昼休み、いつも私が座っている方の席に彼はいた


静かに扉を開け音を立てないように近づくと、


彼は規則正しい寝息を立て、気持ちよさそうに眠っていた









「…重岡くん、」








あの日から始まった昼休みの時間


そのきっかけとなった本を大事に抱きながら机に突っ伏して眠る彼の寝顔を見たら、


なんだかホッとして、気がつけばその綺麗な黒髪に指をかけていた


短く、サラッとすり抜ける髪


何もかもが綺麗で、愛おしさを覚えた









「…明日、楽しみにしてるよ」


「……俺は今日も楽しみにしてたで」


「えっ？」








ゆっくりと開かれた目


寝起きで掠れた声、腕を前に伸ばしながら体を起こす重岡くん


ぽけぽけとした柔らかい笑顔で、にーっと笑う








「おはよう、せんせ」


「お、おはよう」


「昼休み、来てくれへんの？」


「…来てくれないかと思ってたから」


「…俺も思ってた、もう来てくれへんやろうなって、

それどころか、話し掛けても無視されるんちゃうかって」








昨日の事を酷く反省しているようで、


しゅんと小さくなって、椅子の上で三角座り


丸くなる重岡くんの肩に触れれば、擦り寄るように私の手に顔を寄せる


犬なのか猫なのか、触れる重岡くんの髪がくすぐったい









「…昨日はごめんなさい」


「うん、私もごめんね、

痛くなかった？強く突き飛ばしちゃったね」


「…こっちの方が痛い」









そう言って心臓部分に両手を当てる重岡くんがおかしくて、クスッとすればまた拗ねたように頰を膨らませる


重岡くんの可愛い顔も、悲しい顔も、拗ねた顔も、


素直な心の表れ


胸がきゅうっと締め付けられるのは、


私がその“色々顔”に、完全に堕ちた証拠だった








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