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やがて廊下は静まり、今この場所には私と重岡くんの二人だけ
チャイムが鳴っていた事にも気がつかなかった
彼は次の時間、私に授業がないのを知っていたのだろう
ちゃんと授業を受けるように言わなくちゃいけないのは頭ではわかってた
それでも言葉は出せなくて、ただ二人手を繋ぎ、
その場に座り込んでいた
「犬には“太陽”って照史くんが名付けてくれました
雨の日に拾ったから“太陽”って、
それなら雨やないの？って聞いたらさ、照史くんって凄いよなぁ…
太陽が雨嫌いなん、すぐにわかってさ、
今でも雨の日になると太陽はキャンキャン吠えて、
あの日のような大雨だと小さく丸くなって震えてる
やから、“雨”なんてつけたら可哀想やろ？って」
重岡くんの横顔は綺麗だった
優しく目を細めて、柔らかく笑う
「そっか」って呟く私の目を見ては、またふふって笑う
「もうな、こーんなに大きくなってんで、」
そう言って繋がれてはいない方の手で大きさを表してくれる
可愛いなぁ何て言ったら怒るだろうから、
「二年で？！」と、素直に思った事を言葉にした
「そやねんっ！びっくりするよな、あっちゅう間に大きくなるから、照史くんも大笑いやで」
「どこで飼ってるの？」
「照史くんの家やで、おばさんと姉さんがいつも面倒みてくれとるねん
あっ、姉さんっていうのは照史くんの奥さんな！」
「えっ照史くん結婚してたの？！」
「知らんかったっけ」と大きく口を開けて笑う重岡くん
仕事中は危ないから指輪を外しているのだと、
なるほどねと納得して、私は「いいなぁ」とぽつりと呟く
「私も結婚したいな」
「俺としたらええやんか」
「まだ17歳でしょ〜？」
「夏には18になるで！」
「ははっ、ありがとうね」
言葉を返さない重岡くん
どうしたのかと思い顔を向ければ、重岡くんは繋ぐ手に力を込めて悲しそうに目を伏せる
ゆっくりと傾き、私の肩に頭を乗せた
「…どうしたの？」
「実習、…もうすぐで終わってまうから」
「そうだね、明後日が最後の授業かな」
「俺泣いちゃいそう」
「ええっ、泣かないでよ」
おかしくて声に出して笑えば、
口元を隠していた手を掴まれ、学校だというのに呆気なく唇を奪われる
ちゅっと音を鳴らしてゆっくりと離れた重岡くん
「何もおかしない」と、この時の彼は少しだけ怒っていた
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りぃな - 何度読んでも、涙が止まらない…最後の最後まで泣きっぱなしでした。とても綺麗なお話だなと思いました！桜さんが書くお話、大好きです！ (2020年12月21日 23時) (
レス) id: fbf75e46eb (このIDを非表示/違反報告)
ななこ - 三回ぐらい泣きました。小説でこんなに泣いたのは久しぶりでした。読んでいるだけで、その場面が想像できてとても感動しました。これからも楽しみにしています。 (2020年3月13日 17時) (レス) id: af202158c4 (このIDを非表示/違反報告)
なつき - 最後まで涙が止まりませんでした。ほんまにめっちゃ素敵なお話でした。これからも楽しみにしてます！ (2018年4月9日 16時) (レス) id: ebe0082db9 (このIDを非表示/違反報告)
ひまり(プロフ) - 占ツクでのコメント初めてで恐縮です。本当に本当に綺麗なお話でした。個人的には最後の授業の場面で和歌での会話が1番胸打たれ、思わずメモしてしまいました。桜さんのこれからのご活躍心からお祈りしてます。頑張ってください！！ (2018年3月31日 2時) (レス) id: c01e6017ae (このIDを非表示/違反報告)
ゆー - とても感動しました もし良ければ続編など書いて頂きたいです!! 桜さんの作品、本当に大好きです いつも読んだ後は 素敵な恋愛映画をみた後の様な気持ちになれます これからも楽しみにしています!! 頑張ってください（＾＾） (2017年4月6日 16時) (レス) id: 868e94a9c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜
| 作成日時：2016年5月21日 0時
