色 々 顔 《赤》 第二章

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走るように居酒屋から出てきたAさんのお友達さん


お友達さんが来たことによって、案外冷静になれた俺


ミカさんというその人は、俺の背中で眠るその人を見つめてまた困ったように笑っていた








「あー、あの、この人俺の知り合いですよ、

Aさんですよね」


「…え？」


「俺の大切な人なんで放っておけないです、

このままどうするんです？一人で運べないでしょ？

…なら、俺ん家すぐそこなんで、ね？俺に任せてください」









俺の言葉にお友達さんはかなり驚いた様子


戸惑う彼女に少しだけ苛立ちを覚えて、顔を背けて頰がピクッと動くのを感じた


そんな俺を見て、彼女も「じゃあ、お願いします」と言って足早にその場を去っていく


ああ、悪い事してもうたなぁと思いながら、


倉庫の二階にある俺の家へと向かった








家に入りベッドに寝かせれば、静かに涙を流すAさん


月明かりに照らされたその姿は儚くて美しい、そう思った









「…せんせ、悲しい？

なあ、俺も悲しい、…せんせ、悲しいよ」








眠りながら涙を流すAさんに手を伸ばし、


甲を向けて触れれば、指にその涙が伝い、吸い込まれるように指の間に消えていく


せんせーが誰を想ってるかなんてわかってるのに、


わかりきっているのに、


俺を助けてくれた赤色傘のAさん


涙を流す前に救えなかった事に、俺の胸は痛む









「…もったいないなぁ、今日の月は綺麗なんに、

せんせー酔っ払って見れへんやんか、なあ、」








窓の傍からキャンドルを手に取り、それを焚いて再びベッドに戻った


眠るせんせーの手を握り、俺も床に座りベッドに突っ伏して目を閉じる


色々なことを考えた


どうしたらええのか、俺なりに考えた







せんせーが俺に心を許してくれるには、


ああそうか、せんせーに俺の弱みを見せればええんや


そうすればきっと一人で悲しく事も涙を流す事もしなくなる


そうさせないように、一人にさせないために、


せんせーが俺を信頼してくれるように


俺自身が、この殻を破けばええんや









「…せんせ、ごめんなさい、

俺これからせんせーを困らせます、せんせーの為なんです、

俺の色々顔、受け入れてくれますか、

…誰も知らない、俺の顔、」








眠っているせんせーから返事なんて来るはずもなく、


せんせーの規則正しい寝息を聞きながら、俺もそのまま眠りについた








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