色 々 顔 《赤》 第二章

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物心がついた時にはもう、愛なんてモノは与えられていなかった


記憶なんてないけど、きっと俺が初めて寝返りを打った時も、初めて立った時も、


初めて歩いた時も、初めてパパ、ママ、そう呼んだ時も、


あの人たちはそれを見てもいないし、聞いてもいなかったのだろう







外の世界を知らなかった


初めて雷を聞いた時、雲を切り裂くように光るそれに目を奪われ、少しの時間差で聞こえる激しい音に怯えた


何が起きたのか尋ねようにも、あの人たちは姉にしか興味がない


俺の言葉なんて届かない


雷に怯え大声をあげて泣いたって、


“うるさいねん” て、幼い俺には大きすぎる手のひらが、俺が吹き飛ぶほどの力で頰を叩くから、


その日から泣くのもやめた







小学生になって、だんだんわかってきた


俺の家は異常なんや って






給食が俺だけなかったのは、給食費が支払われていないから


せんせー達は親を呼んで話をするも、金がない、学費だけで精一杯の一点張り


餓死でもさせたいのだろうか、生憎俺の周りの友達は優しい子ばかりでさ、


神山智洋っていう、心優しい男の子が、


いつも俺と給食を半分こしてくれていた







学費を払ってもらえてるだけでも有り難いと思った


だから俺はただひたすら勉強だけをしていた


見返してやる、そしてこんなところお望み通り早く出てってやる


そう強く思いながら、必死になって勉強をした







中学になっても、神山とは同じクラスだった


一人が嫌いな俺と、ずっと一緒にいてくれた


家では笑えない分、学校では心から笑えていた


楽しくて、幸せで、俺は学校が大好きだった


中学でも生徒会長を務め、周りにはいつも人がいた


幸せだった、俺は一人じゃないって、


本当に幸せだった








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「なあ、神山」


「なにー？」


「…俺の事おかしいって思わへんの？」







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小学生の頃の地理の時間


地図記号で俺は“病院”を知った、“交番”を知った


どんなものだろう、ずっと気になって、


神山に聞いた


小学四年生の頃だ、





「病院ってどういうとこなん？」




少し驚きや戸惑いの表情を浮かべても、彼はすぐに優しく笑って丁寧に教えてくれた





「病気を治してくれるところやで」




“病気”は漢字の勉強の時に知った


へえ、じゃあ今くしゃみしたあの先生も病気なんやろなぁって


それが“花粉症”だと知るのは、照史くんに出会った時







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