* ページ44
*
あれから四ヶ月と半月が過ぎた。
私とセンラくんはニヶ月ほど前から同棲を始めた。
私はまだ早いって思ったし、センラくんにも言ったけれど、彼は A可愛いから他の男に取られへんか不安やねん と言った。
でもなぜか私の心臓の心拍数変わらなかった。
話すだけで胸がきゅって縮んで。触れたところが火傷しそうなほど熱を帯びて。センラくんを想うだけで甘く苦しかったのに。
話すだけで嫌悪感が増す。触れたところから虫唾が走る。センラくんを思うだけで気持ち悪くなった。
それ以上に、彼に対してこんな気持ちを抱いてしまう自分が怖かった。
好きなはずなのに。大好きなのに。気持ち悪い怖い触らないで名前を呼ばないで。好きだよ。大好きだよ。
何で、なんでなんで。
(………きもち、わるい)
******
ガチャガチャ、と扉に鍵が差し込まれて扉が開く音がした。
玄関からただいまー、と彼の声が聞こえて小さくおかえりと返した。
読んでいた本を閉じ、リビングの扉が開くのと同時に振り向くと、彼はふわりと微笑んだ。
彼は着ていたコートをハンガーに掛けると、私が座っているソファーの隣に腰掛けた。
「A、大事な話があんねん」
「…え、なに?」
口角を上げて彼を見つめ返すと、彼はカバンから手のひらに収まるくらいの小さな箱を取り出した。
ぞわ、と背中に嫌なものがはしった。
「__結婚してください」
一生大事にします。
そう言って目尻を細める彼が、好きになれない。
終わらない嫌悪感の連鎖に、私はもう
「…は、い」
どうしたらいいのか分からなくなってしまった。
-fin-
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なのなの-VII(プロフ) - 以前から気になっていたのですが、時間がなく、やっと拝見させていただくことができました。私の少ない語彙力では、気持ちを全て伝えることができないことが悔しいです。なので、一言だけ。とても、素晴らしかったです。 (2019年12月9日 23時) (レス) id: 3d69e77dfd (このIDを非表示/違反報告)
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