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「待って、センラくん、あの、」
気づけば立ち上がって、彼の背中に呼びかけていた。 待ちきれずに口から飛び出た言葉は、スカートを掴む自分の手と同じように震えていて、それでも私より耳の良い彼には届いたはずだ。
息が途切れ途切れになって、それでも続く言葉を、その二文字を押し出そうとしたそのとき。
「えっちょA、ストップ！！」
彼の憎たらしいほど綺麗な声に、私の音は容易く潰された。
＿＿＿拒否、された。
言わせても、くれないまま。
その事実を理解すると同時に、視界が、歪んで、
「あっちょ、何で泣くん泣かんといて？！」
振り返って、驚いて、駆けてくる。もうそれすらも同情に思えてくるのに、私と目線を合わせてしゃがむ彼を、両手を握る彼を、それでも拒むことはできなくて。
もうやだ、捨てるなら、おもいっきりやってよ。
さっきみたいに思わせぶりなことなんか言わないでさ。
だってそんなことなんてしなくっても、もっと酷いことされても、私は、あなたが好きなんだから。
何かを諦めるように、ぎゅっ、と目を瞑ったとき。
「A、傷つけたんならごめんな。...でも、多分、Aが想像したような意味やない」
「ここまで言っといて、あれなんやけどさ」
「ここで次の大会コケたら、俺めっちゃカッコ悪いやん」
＿＿＿目を、薄く開けた。
彼の黄色い瞳は、どこまでも真っ直ぐに私を射抜いて。
「次の大会のとき、絶対、一番に、Aのおるところに行く。＿＿＿やから、それまで、待っとってや」
驚いて嬉しくてでも言葉が出なくって。
ただその代わりに、目が大きく見開かれて、涙がほろほろと零れた。
「えっ待ってだから何で泣くん？！」
だって、だってだってだって、
ああもう、そんなこと言うからだよ。
そんな、そんなこと、
「待つに決まってるじゃん...っ」
彼とは似ても似つかないぐしゃぐしゃに潰れた汚い音を、それでも、彼と同じ決意を持って放つ。
ぐしゃり、と私の頭上で髪の毛がかき回されて。
気がついた頃にはもう離れていたけれど、その温もりはきっとこれからも、側にあるのだ。
じゃあもう帰るか、なんて、どこか嬉しそうにセンラくんは歩き始め＿＿＿その途中で振り返る。
野球部員にも通用しそうな綺麗なフォームで、空き缶をゴミ箱へ投げて。
見事クリーンヒットした金属と金属がカラン、と、夏の氷のような音でグラウンドに響いたのだった。
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なのなの-VII(プロフ) - 以前から気になっていたのですが、時間がなく、やっと拝見させていただくことができました。私の少ない語彙力では、気持ちを全て伝えることができないことが悔しいです。なので、一言だけ。とても、素晴らしかったです。 (2019年12月9日 23時) (
レス) id: 3d69e77dfd (このIDを非表示/違反報告)
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