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朝。
いつも通り、日の光を浴びながら通学路を歩く。
昨日は雨が降ったこともあり水溜まりがあったり葉に雫があったりと少しだけ気分が上がる。
向かい側から赤髪の坂田さんと茶髪のうらたさんがやってくる。
「ってかさぁ、坂田ってハンカチ持ってきてんの?」
「今日は持ってきたで!」
「いつもは?」
「持ってきてない!!」
「はぁ?」
相変わらず楽しそうな会話だな、と感じながら歩いていれば黒に赤のチェックのハンカチが落ちていた。
さっき見た時にはなかったから坂田さんのなのだろう。
「……あー、ごめん。俺日直だ」
「まじで!? うらさん急げー!」
応援するような弾けた声。
そっと手に取ったハンカチを持ってゆっくりと歩いている坂田さんに声をかける。
「あ、あの!」
上ずった声で坂田さんのことを呼べば彼はこちらを振り向いた。
「へ? どうしたん?」
明るくて弾んだ声と共に燃える炎のような瞳がこちらへ向けられる。
小さく息を呑んで、深呼吸を繰り返す。
「ハンカチ、落としてないですか?」
その言葉を聞いた坂田さんはキョトンとしてから言葉を繰り返した。
やがて、合点が一致したのか満面の笑みを浮かべた。
「ありがとう!」
キラキラと輝く笑顔でハンカチを受け取る。
その笑顔はいつもそっとだけど見て勇気を貰っていたもので、こんなに間近で見れていいものかと若干疑問を抱きながらも見つめる。
「名前は?」
そう問われて一方的に知ってたんだな、と若干申し訳ない気持ちを覚えた。
「A、です」
「よろしくなぁ、Aちゃん」
納得したように頷いて太陽が輝くような眩しい笑顔で私の名前を呼んだ。
――今、貴方との
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なのなの-VII(プロフ) - 以前から気になっていたのですが、時間がなく、やっと拝見させていただくことができました。私の少ない語彙力では、気持ちを全て伝えることができないことが悔しいです。なので、一言だけ。とても、素晴らしかったです。 (2019年12月9日 23時) (レス) id: 3d69e77dfd (このIDを非表示/違反報告)
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