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「まあA様、とてもお綺麗に出来ましたわ!やはり元がよろしいと仕上がりも最高ですのね!」
着付けを担当した侍女はそう感嘆して、一礼してから部屋を出ていった。
鏡を見れば、貴族や高官の目に触れてもいいように飾り付けられた自分と目が合う。
……初めて、自分の顔を見た気がする。
まさか、王と結婚するなんて。
扉が開く音がして振り返った。やはりこの方は後ろから登場するのが好みらしい。
「───」
会ったときは必ずと言っていいほど、どこか着崩している志麻。今日はきちんと正装しており、端整な顔立ちをさらに引き立てていた。
「綺麗に出来とるな、A。…そろそろ入場や。ほら、」
顔をほころばせて手を差し出される。手をとれば、ぐい、と引き上げられた。
二人で大きな扉の前に立つ。落ち着くために、隣に話しかけた。ずっと気になっていたことを、今なら聞けるかも、と思って。
「──志麻もやっぱり……仙、か?」
年を取らず、百年も同じ王が治世なんて、不老不死でないと出来っこない。そして不老不死なのは生粋の仙人か──神から仙の号を下賜された者のみ。
見上げれば、笑みと一緒に快活な声が降ってきた。
「ん、せやで。同じ仙やし、俺はAを愛しとる。Aとならずっと一緒におれるやろ?」
顔を二人でほころばせたまま、前を見据える。
壮大な扉が開き──豪華に飾り付けられた会場が見えた。
この王は、治世百年目にして、たった一人の正室をむかえる。
──新しい時代が、ここに始まるのだ。
その日の空は清々しい、雲一つない晴れだったという。
『100年の治世に花束を』by
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なのなの-VII(プロフ) - 以前から気になっていたのですが、時間がなく、やっと拝見させていただくことができました。私の少ない語彙力では、気持ちを全て伝えることができないことが悔しいです。なので、一言だけ。とても、素晴らしかったです。 (2019年12月9日 23時) (レス) id: 3d69e77dfd (このIDを非表示/違反報告)
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