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#10 ページ10
不思議な顔をして、首を傾げる彼。
多分……違うのかな？
「風邪、引いてませんか？」
否定の意味で首を横に振られた。
「良かった。あの時、すごく雨が……」
しばらく彼と話したけど、彼は全て首を縦か横に振るだけのわたしが一方的に話しかけるだけだった。
それでも良かった。
家に帰ってもひとりで、誰もいない中を過ごして寂しいだけだから、いっときだけでもこうやって誰かに何かを言うのが、楽しかった。
「じゃ、わたしはこれで。一方的でごめんなさい。ありがとうございました」
わたしは深々と彼に頭を下げ、帰路につこうとした時。
「ん？」
一歩踏み出した時、裾に何かが引っかかって歩みが止まった。
振り返ると、彼がわたしの裾を摘んでいたのだ。
「どうしましたか？」
「……て」
「え？」
彼は顔を上げて、わたしの目をしっかりと見て言った。
「助けて」
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作者名：菜々子
| 作成日時：2019年5月15日 11時
