#38 ページ38
父とミンギュは隣の部屋から出てきた。
手のひらの傷は綺麗に治っていた。
「お父さん。読んだよ」
わたしは父にファイルを返した。
そしてミンギュを
「色々訊きたい事があるから、今度話さない？」
ミンギュの前で彼の過去の事を訊くのは、気が引けたし、わたしも今、感情的になっているかもしれないから、落ち着いた時に話す方がいいと判断した。
「ああ」
父はそれを承諾してくれた。
「さっき治療のついでにメンテナンスをしたんだけど、劣化してる部分が多かった。放置してるとそこから不具合ができて寿命が縮む。月に一回でいいから、彼とここに来てくれないか？」
「分かった。でも、そんな事したらいつか誰かに見つかっちゃうんじゃないの？」
「そうだな……。じゃあ、実家に連れてきてくれない？ 地下にちょっとした施設があるんだ」
「え！？」
わたしは衝撃の事実を知って驚いた。
「そんな物、作ってたの？」
「ああ。みんなには内緒にしてた」
「研究熱心なんだね」
これ以上長くここにいたらいけないという事で、わたしとミンギュは父が運転する車に乗って、家まで送ってくれた。
「ありがとう」
車から出て、先にミンギュを家の中に入れた。
運転席にいる父にそう言う。
「ミンギュの事、頼んだよ」
「うん。任せて」
「A」
わたしは家の中に入ろうとすると、父がそれを止める。
振り返って父を見ると、神妙中面持ちだった。
「もしかしたら、彼を手放さなければならない時があるかもしれない」
「え？」
「その時、これを」
父は、薄型で手のひらサイズのタブレットを差し出した。
「この中に、彼を強制的に機能停止するボタンがある。あのファイルを見たら分かるだろう。軍に彼が渡ったらどうなるか」
機能停止させるという事は、一生彼は動かなくなる。
一時的ではない、二度と動かない。
それは、人間と同じ“死”だ。
「お父さん」
「なんだい？」
「やっぱり、今から話さない？」
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作者名：菜々子
| 作成日時：2019年5月15日 11時
