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すると、父は灰色の表紙のファイルをわたしに差し出した。
《所長のみ閲覧可》
表紙には赤文字でそう記されていた。
「これは?」
「ミンギュの全てが詰まっている。彼の治療をしてくるから、その間に読んでみて」
「う、うん……。ありがとう」
すると、父とミンギュは隣の部屋に入っていった。
わたしは表紙をめくる。
《◯月◯日。
17人目の被験者がやってきた。
年齢、10歳。
住まい不明、家族なし。》
これは父の文字だ。
日付から、10年前の物だというのが分かった。
そのメモの隣に、幼い男の子の写真がある。
……ミンギュだ。
《◯月×日。
実験は無事成功。
生前の記憶消去済み。
記憶力が著しく上昇。》
《◯月◎日。
身体能力の向上。
1トンの鉛を持ち上げた。
9746に向けて銃を放つと、それを指で摘むように受け止めた。
異常に能力が向上していっているが、言語能力は全く向上しない。
今のところ、一言も話さない。》
9746……それが元は彼が呼ばれていた名前なのだろう。
そしてしばらく、記録が途切れていた。
おそらく、なんの発展もなかったのだろう。
しかし、3年後。
《×月×日。
9746以降、数々の被験者で実験をしてきたのだが、なんの成果も得られなかった。
社会的にいない人間を使って、人体実験を行う事で世界に貢献をしていくなんて……。
俺はなにをしているんだろう。》
《×月◯日。》
わたしはこの日に見覚えがあった。
この日は、彼とわたしが初めて会った日だ。
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作者名:菜々子 | 作成日時:2019年5月15日 11時