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#35 ページ35

すると、父は灰色の表紙のファイルをわたしに差し出した。



《所長のみ閲覧可》



表紙には赤文字でそう記されていた。



「これは?」

「ミンギュの全てが詰まっている。彼の治療をしてくるから、その間に読んでみて」

「う、うん……。ありがとう」



すると、父とミンギュは隣の部屋に入っていった。

わたしは表紙をめくる。



《◯月◯日。

17人目の被験者がやってきた。

年齢、10歳。

住まい不明、家族なし。》



これは父の文字だ。

日付から、10年前の物だというのが分かった。

そのメモの隣に、幼い男の子の写真がある。

……ミンギュだ。



《◯月×日。

実験は無事成功。

生前の記憶消去済み。

記憶力が著しく上昇。》


《◯月◎日。

身体能力の向上。

1トンの鉛を持ち上げた。

9746に向けて銃を放つと、それを指で摘むように受け止めた。

異常に能力が向上していっているが、言語能力は全く向上しない。

今のところ、一言も話さない。》



9746……それが元は彼が呼ばれていた名前なのだろう。

そしてしばらく、記録が途切れていた。

おそらく、なんの発展もなかったのだろう。

しかし、3年後。



《×月×日。

9746以降、数々の被験者で実験をしてきたのだが、なんの成果も得られなかった。

社会的にいない人間を使って、人体実験を行う事で世界に貢献をしていくなんて……。

俺はなにをしているんだろう。》


《×月◯日。》



わたしはこの日に見覚えがあった。

この日は、彼とわたしが初めて会った日だ。

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作者名:菜々子 | 作成日時:2019年5月15日 11時

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