#42ジョンハン ページ42
「そうか。全部終わったんだな」
俺はAから直接、組織が解散したとの報告を受けた。
彼女はこれから学校に通いたいとのことだったが、死んだこととなっているため新しい名前を考えてほしい、と相談しに宿舎に押しかけてきたのだ。
「俺は、お前のままがいいよ。A」
「だから、その名前を使うわけにはいかないの……」
「同姓同名ってことにすればいいじゃん。新しい名前なんていらない。お前はお前だ」
「……でも、家族にはなれないよ」
「誰が何と言おうと、お前は俺の妹だ。誰にも否定させない。そして、お前には家族がいる。帰ってくる場所はあるんだよ」
「お兄ちゃんって、そんなに素直だったっけ」
「うるせーな」
小さく笑うA。
つられて俺も笑ってしまう。
こんな風に話して、笑いあえる日が来るなんて思ってもみなかった。
その時、来客を知らせるチャイムが鳴り響く。
いいところで来た。
「実はさ、お前に会わせたい人がいるんだ」
「誰？」
「ちょっと待ってろ」と俺は立ち上がり、玄関のほうへ向かう。
そして、扉の外から「入ってきていいよ」と声をかけた。
扉が開くと、そこにいるのは両親。
Aは驚いている顔をしているし、父もそうだった。
ただ、母は驚くよりも先に笑顔を見せる。
「Aちゃん。こんなところにいたのね」
「……お母さん」
母はAを抱きしめる。
未だに母はAの幻と暮らしていたので、ちょっとここまで出ていたのだろうと思っているんだ。
しかし、父は違う。
明らかに戸惑っていた。
「ジョンハン……この子は……」
「A。俺の妹で、父さんたちの娘だよ。訳あって死んだことになってたんだ」
「……そうか。Aは生きていたのだな」
涙を流す父。
初めて父が涙を流す姿を見た。
「よかったら、Aに何があったのか教えてくれないか？」
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作者名：菜々子
| 作成日時：2022年11月22日 19時
