#44ジョンハン ページ44
俺を抱きしめる母さんの腕は黒い鎌に変形し、俺の背中を貫こうとしていた。
今度こそ死ぬ……。なんでこんなところで……!
しかし、その直前にその刃先は止まる。
何か液体が滴るような音が聞こえた。
振り返ると、Aが刃を手づかみで抑えていたのだ。
「お兄ちゃんごめん。洋服、汚した」
「何言って……」
「わたしがいて、よかったでしょ」
Aは母さんの鳩尾に拳を叩き込むと、母さんの体からはシャドウが抜け落ちた。
そのまま倒れる母を、Aは抱きしめる。
「臭かったのはさっきのアイツのせいだったのね」
Aは母の体をゆっくりと床に寝かせる。
そして懐からハンカチを取り出すと、怪我をした部分にあてがう。
「今のが……」
父は初めてシャドウを目の当たりにしたのか、腰を抜かして驚いていた。
「A、お前大丈夫なのか!?」
しかし、すぐに父は妹のことを心配する。
Aは「大丈夫」と笑顔を見せた。
「多分あれが最後の生き残りね。まだお兄ちゃんの命を狙ってたのは許せない」
「俺はまだ、Aに守ってもらわないといけないのか……」
「そうね。少しだけ傍にいるよ」
Aはキッチンの蛇口で手についた血の汚れを落とす。
掌にあったはずの傷はもう綺麗さっぱりとなくなっていた。
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作者名:菜々子 | 作成日時:2022年11月22日 19時