俺の全部を好きになって【角名倫太郎】

△ ページ8

休みというものはあっという間に過ぎ去って月曜日。
今日は朝から雨で湿気が多く気分も下がる。



「まじ湿気がこの世で1番嫌い」



少しくせっ毛の友だちがボヤく。
じめじめとした空気は何だか不快で「ほんまにな」と同意の声を上げた。


そんな他愛もない話をしていると、朝練終わりの男バレ部員が教室に入ってくる。
角名も宮治もどこかダルそうな感じだった。



「あ、そういえばA男バレの練習試合行ったんやろ？どうやった？？」



私に「絶対行け」と言ってきた友だちが目をキラキラさせながら聞いてくる。
そんなに気になるもんか？と疑問に思いながら「かっこよかったけど」と答える。



「かっこよかった……！？」


「え、なに、なんなん？」


「あのAが顔以外でかっこいいって言うとは。
角名くんさすがやな。」



くせ毛の友だちが「確かに」と頷いた。
そう言われればそうかもしれない。でも私は角名の顔以外好きじゃないねんから。



「でも好きになったわけじゃ」


「素直になれよって」


「腹立つ！」




そう言いながら笑っていたらふとどこかから視線を感じた。
不思議に思い見渡すと、角名とばっちり目が合った。


角名の前には宮治がいて、熱心に食べ歩きマップを眺めていた。

角名は口パクで「すき」と言うとすぐに宮治へと視線を戻し、なにやら楽しそうに話し始めた。




「なっ」





角名はいきなりそういうことをしてくる節がある。
正直少し恥ずかしい。


いきなり顔を赤くした私に驚いたのだろう。
友だちは「なに？」と私の視線の先を見た。



「ほほーん、角名くんか。こりゃ相当惚れてるな。」


「アホなこと言うな！」



「惚れてる」「惚れてない」で言い争ってると角名に話しかける女子が目につく。
クラスで1番可愛い和田さんだ。
和田さんは少し頬をピンク色に染めていて角名と宮治に話しかけていた。宮治は食べ歩きマップに夢中やけど。



なんだか胸の辺りがモヤッとする。
気づかないうちに眉間にシワがよって、ちょっとイライラする。


雨の日の湿気と同じぐらい嫌。


私もそこまで鈍感ではない。和田さんが男バレに近づきたいと思っていることもわかるし、自分が少し、ほんのちょっぴり嫉妬してることもわかった。




「お、嫉妬ですか」




友だちがニヤニヤしながらこちらを見ている。相当顔を出ていたらしい。

そうからかって来る友だちが憎たらしくて、思いっきり手で両頬を挟んでやった。

△→←△

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す