終わらない夢【HP】 (ページ1)

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紙飛行機ページ1

その日の陽射しはいやに眩しくて、風がさらさらと並木の葉を揺らした。私はそんな風景を窓から眺めていた。
ふと、斜向かいの家の少年が視界にちらついた。青光りする程の漆黒の髪、憂いを帯びた長い睫毛の瞳が美しくて、思わず目を奪われた。

(久しぶりに、外へ出ようかしら)

なんとなくそんな気分になって、カーディガンを羽織り、帽子を被って庭まで出てみた。
強い陽射しにぎゅっと目を細める。新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込んで、深く呼吸するとなんだかいつもより前向きな気持ちになれた。そうだ、と思い付いて家の中に戻ると、手近な紙を折って紙飛行機を作った。
庭に戻り、斜め上へ飛ばす。紙飛行機は放物線を描いて芝生に落下した。想像よりも短い飛距離に私は軽く唸り、今度はもっと上へ飛ばしてみる。さっきよりはよく飛んだ。
昔はよくこうして遊んだなあとふと懐かしくなって、口元が緩む。

「えい！」

今度はめいいっぱいの力を込めて飛ばしてみた。紙飛行機はスーッと空を切り、まっすぐに飛んだ…かと思うと、ふいに風が紙飛行機を攫った。紙飛行機は進路を変えて、斜向かいの家の庭へ飛んでいった。しまった、つい夢中になりすぎた…と思い、斜向かいの家へ目を向けると、あの少年と目が合った。

(まさか、見られてた…？)

｢｢あの！｣｣

2人の声が重なった。

｢ああ、すみません…。お先にどうぞ｣

少し低い、落ち着いた綺麗な声だ。少年がそういうので、私は先に話しだした。

｢あの、お恥ずかしいのですけれど、お宅のお庭に紙飛行機が飛んでいってしまって。もしよければ取りに行っても？｣

｢もちろんどうぞ。でも、よければ僕がそちらまで届けます｣

少年の言葉に甘えて、私は少年の家の門の前まで行き紙飛行機を待った。本当は、こんな玩具のひとつくらい放っておいてもいいのだけど。本当なら、アクシオを使って自分で取ることだって出来るのだけど。あの少年と知り合う為の口実を自ら作った私は、卑怯かしら。