あの双黒がオタクだった件について。【文豪ストレイドッグス】

《番外編》オタクでも辛いことがあれば泣きたくなるものさ。 ページ23

《周りの人より特別な力を持っていても私自身は特別ではない。》

これが大人になって思い知った現実だった。






「ポートマフィアの全異能力者を総動員した対立組織の排除･･･ですか。」

「あぁ、何でも今回ばかりは敵がかなり厄介でね。」

そう言って首領は苦い笑みを浮かべる。


ポートマフィアの異能力者全員が参加する。


それは幹部も全員出るということ。



幹部が全員出るとなるとこの任務にそれなりの重みを感じた。


当然中也さんと太宰さんも出るのだろう。


あの二人はポートマフィアの戦力においては大黒柱と言っても過言ではない。



「それでだね。君を呼んだのは他でもない。

Aくん。君もこの任務に参加したまえ。」


･･･首領は一体何を考えているんだ。


「･･････お言葉ですが首領。
私の異能力は物体を別空間に移動させるだけの単なる物体移動系能力です。

正直尾崎幹部や中原さんのように戦闘向きではありませんし戦力にはならないかと。」

「うーん･･･それは君の使い方次第だと思うのだけれどねぇ。」

「と言いますと？」

「･･･A君。君は型にハマりすぎてはいないかい？

確かに物事を冷静に考えて無謀なことをせずにいれば自分も周りの人も安全だろう。

しかしね、時にその無謀な有り得ない考えが最適解を生み出すこともあるのだよ。」


そう言ってニコリと微笑む首領。



「あはは･･･そのお言葉肝に銘じておきます。」


笑顔を取り繕いながら首領に一礼し
部屋を出て、トスンと壁に寄りかかった。


「馬鹿みたいに突っ走った結果がこれなんだけどね･･･。」


自嘲的に笑いながらそう呟き目的地に向かって歩き始めた。






ここでちょっとした無駄話を1つ。


私の異能力が目覚め始めたのは小学校3年生の頃だった。


ヘアピンを握りしめていたらいつの間にか手の中から消えていたのだ。


日が暮れるまで探して見つけた時にはヘアピンは花壇の土に埋もれていてその時に自分の異様な力に気づいた。


その後この異能力のことが周りの友達にバレてしまったが、この異能力は皆が1度は憧れる《瞬間移動》と呼ばれるものらしく私の周りには人が集まるようになった。



この力で女子をいじめていたガキ大将をやっつけたのは私の密かな武勇伝だ。




こんな私でもこの力で誰かを守れるのではないか。


いつしかそんなこと少年じみた夢を見るようになった。



しかし私は思い知った。



弱い奴は所詮弱いままなのだと。

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