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「このガキ…っ」
体勢を崩したままだけれど挑発したらすぐ頭に血が上ったようで額に血管を浮き立たせていた。
多対一で戦闘にも慣れていない私に勝ち目が薄い事も分かっているけれど、敵の冷静さを欠く事で可能性が開けるのならと敢えて強気に出た。
『っ…』
足首を締め付ける舌の圧が徐々に強くなって来て顔を顰める。『痛いでしょうが…！』と杖で思い切り叩きつけるとぎゃあと濁った悲鳴を上げながら絡めた舌を離した。
その隙にふらつきつつも立ち上がりながら詠唱する。
『ーー大気よ、唸れ！我が道を阻む者達に制裁を！セイバーサイクロン！』
「！な…ッ」
杖先を地面にコン、と鳴らすとそこから猛烈な強風が渦を巻いて発生し、巻き込まれたヴィラン達は屋上から飛ばされて行った。
『…ちょっとやり過ぎたかな…みんな飛んでっちゃった』
頑丈そうだったから落ちても死なないとは思うけど。と考えながらトコトコ縁の方に近付く。
するとあろう事か先程のトカゲ男が外壁にしがみ付いていた。目が合ってしまった瞬間、身を引こうと一歩下がったが勢い良く登り戻って来たトカゲ男の大きな手に頭を掴まれ地面へ叩きつけられた。
『！い…ッ…』
「あっぶねーなくっそ！！ったく…！これだからエリートは…！」
いけない、今頭強く打った。クラクラする。
私の頭を掴みながら何かを喚いているけれど、意識が少し朦朧としているのか上手く聞き取れない。離してくれる訳が無いけれどトカゲ男の手を弱々しく掴んで鱗に覆われた指の隙間から睨みつける。
その様子を嘲笑うかのように男は鋭い爪の生える手を振り上げ勢い良く下ろす。
私死んだかな、と思ったけれどほんのり痛みがあるのは胸から腹の辺り。頭を掴まれていて確認出来ないけれど傷付けられたという事だけは理解できた。
(こんな所で倒れてる場合じゃない…けど、手で口も塞がれてて詠唱出来ない…っ)
「この状態なら個性使えねーんだろ？俺ぁ爪で肉を裂くのが好きでなあ、お嬢ちゃんの白い肌、綺麗に裂いてやっから安心しろよ」
殺される。
ヴィランの恐ろしさを感じたのは二度目。
再び振り下ろされた爪は足へ。
痛くても口を塞がれて叫ぶ事も出来ない。
私が苦しむ様を見て嗤う男はまた手を振り上げる。
しかしその爪はもう私を傷つける事はなかった。
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通りすがりの読者 - すごく大好きです。ありがとうございます。 (2020年4月7日 20時) (
レス) id: e61e95ec0f (このIDを非表示/違反報告)
なの(プロフ) - すごい面白かったです！大変だと思うけど更新頑張ってください！！ (2020年4月5日 1時) (レス) id: 232c0cd734 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なさ | 作成日時：2020年2月13日 2時
