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-side Iwamoto-
向井がいるらしいというマンションに向かう途中、自分が交渉するから、俺は用心棒として万が一の時守ってほしいと阿部から言われた。
俺がここに来てから「案件」を行うのは初めてなのを考慮しての役割なんだろう。
fk『捜査がどんな感じか体験してくるんだよ！』
家を出る直前のその言葉に、俺も警察として働くんだという実感がようやく湧いてくる。
「もしかして、305と306借りてる人だったりします？」
管理室を訪れ、警察手帳を見せた阿部は探し人がいるから賃貸借契約書を見せてほしいと伝えたら2つ返事で了承してきた。
そのうえ、ファイルを渡してくる管理人の中年女性は捜査に意欲的。
ab「そこの入居者の方に気になることでも？」
「即日入居したと思ったら、306号室が色んな人の出入り絶えなくて。
前もね、廊下掃除してたら脚を引きずりながらそこに入っていった人が少しして怪我なんかしてないみたいに出て行ったんですよ。それに私びっくりしちゃって。」
言葉選ばずして言うなれば「おばちゃんの世間話」のつもりで管理人は話したのだろうけれど、その目撃情報は俺らにとっては有益なもので。
305号室と306号室の契約書を見せてもらうと、契約日は向井が失踪した木曜日。
契約者の苗字は「向井」ではあるものの、名が違う。親戚だろうか。
「事件とかだったらすぐ教えてくださいね。ここを事故物件にはしたくないの」
行ってみようか、管理人に礼を伝え阿部が提案してきた。
＊
306号室のドアの前でアイコンタクトを取ると、阿部はインターホンを押した。
相手も攻撃性はないとはいえ一応能力者ではあるから俺はいつでも能力が発動できるように準備をして。
バタバタと聞こえてきた慌ただしい足音からして中に誰かはいるらしい。
解錠され扉が音を立てて開く。
覗かせてきた顔は写真でも例の動画でも見たとおりだ。
ab「貴方が向井康二さん？」
「ふぇっ？なんで俺の名前知っとるん？」
ab「警察の者です。向井さんの捜索願が出されてたので、そのご報告に」
阿部が説明すれば、きょとんとした顔の後、あぁ、と心当りがあるらしく笑った。
kj「俺が無断で仕事休んで家にも帰っとらんからか。そりゃご迷惑おかけしましたわ」
それじゃあ、
向井が閉めようとしたその扉を反射的に押さえると、びっくりしたように身体を縮めた。
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作者名：紗絢
| 作成日時：2020年11月2日 17時
