5話【E】 ページ7
「…で、俺に誘拐してこいと」
「人聞きの悪いこと言わないでくださーい、俺は東軍の大将に言われてやってるだけですぅ」
自分の部屋である応接室の大きな椅子に座り、それで遊びながら口を尖らせるきっくん。
なぜ俺達なんだ、最近任務続きで寝不足なのに、このクソ大将。
心の中で不満をぶちまけながらも、了解をした。
きっくんが俺とFBに頼んだのは、とある人間の確保。
明日西軍の領地に入ってくるから、連れてきて欲しい、らしい。
「なんで東軍の言うこと聞くの？いつも無視なのに」
出された紅茶を見つめて言うと、きっくんはにやりと嫌な笑みを浮かべた。
「ナイショ」
「…変なことは仕出かすなよ、俺が怒られるから」
紅茶を喉に流し込み、ちらりときっくんを見れば、何故か四人共持っているロケットペンダントを開け、一人でニヤニヤしている。正直言って、キモいぞ。
「分かってるよ、えおえお隊長は怒られるとすぐに不機嫌になっちゃうもんねぇ」
「…うるさ、だって上司嫌いなんだもん、前線で死 ねばいい」
「辛辣…」
あの上司は、今すぐにでも死んだらいいと思う。
自分は何もしないくせに、俺達にだけで命令するし。
「ねぇきっくん、なんであんな野郎追放しないの」
「ええ？んー、なんでだろうね？」
尋ねると、きっくんは俺の方を向いて笑った。
ふふ、と微笑むきっくんの目の奥に、深い深い闇が姿を覗かせた。
◆
次の日、基地周りをぐるぐるしていると、前に一人の女性がいるのが見えた。
その背中は小さくて、華奢で。前線で戦っているなんて、想像も出来ない。
ぼーっと見ていると、女性がゆっくり振り返る。
綺麗な黒髪が風に揺れ、しない筈のシャンプーの香りが鼻を抜ける。
ヘルメットやガスマスクをせずに、なんとも無防備な格好だ。
目を見開いた女性は、一歩後ろに下がり俺を睨んでいる。
FBに伝えて狙撃させる予定だったのに、俺は突っ立って女性を見つめていた。
理由はよく分からない。会ったこともないのに懐かしい気持ちが心から溢れて、抱き締めたくて、苦しくて、謝りたくて。
頭が痛い。目の前が赤く点滅して、やっと無線に手を伸ばした。
えふびー、と低い声で呼べば、はぁいと返ってくる緩い返事。いつも通りのやり取りだ。
避けようとする女性の肩を押さえ、壁に叩きつけると、赤いソレが宙を舞う。
やっぱり、いつ見てもソレは綺麗である。だんだん赤黒く変化していくところも、全て含めて。
続く
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玉ねぎプリン(プロフ) - 那乃さん» レスありがとうございます！そ、そうなんですか…！？わ、すごく嬉しいです…！私も更新頑張ります！(？) (2018年11月25日 16時) (
レス) id: c1eca33c33 (このIDを非表示/違反報告)
那乃 - 玉ねぎプリンさん» ありがとうございます、めちゃくちゃ嬉しいです…！玉ねぎプリンさんの作品が好きで、そこから書き始めたので…本当にありがとうございます、更新頑張りますので、暖かい目で見守ってもらえると嬉しいです！ (2018年11月25日 14時) (レス) id: 616cac351f (このIDを非表示/違反報告)
玉ねぎプリン(プロフ) - 初めまして。たまたまこの作品を見かけ、題名に惹かれました。プロローグや設定からもう好きです。更新、楽しみに待っています。 (2018年11月24日 13時) (レス) id: c1eca33c33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：琉音 | 作成日時：2018年7月14日 22時
