【d!】ハッピーエンドだけが全てじゃない【短編集】 (ページ10)

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「それ知っててなんでAさんのこと止めなかったんですか」

zm「........あいつの為にならんやろ。」

目にかかる程に伸びたゾムさんの前髪から、鋭い双眼が覗く。その眼は少しだけ悲しそうだった。

zm「まあ、俺はショッピくんの方がお似合いやと思うで。ずっとAのこと見てきたの、ショッピくんやろ」

俺やコネシマじゃなくって。

そう呟いた後、何処かへと立ち去っていったゾムさん。

もしかしてゾムさんもAさんのこと.....

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その日の夜、Aさんから電話が入った。

「今から会って話せる？」という趣旨だったが、二つ返事で了承しAさんのいる場所へと向かった。

教えてもらった場所は、よく二人で行く居酒屋だった。先程までコネシマさんとここで居たらしいが、Aさんが帰したとのこと。

表情を見て少しだけ嫌な予感がした。

もしかして、コネシマさんに彼女さんがいることを聞いたんじゃないか。

そんな気がしてならない。

『ショッピくんは知ってた？』

「何がですか」

『コネシマさんって.....彼女がいるらしいん...だよね』

両眼には今にも溢れ落ちそうな程に涙が溜まっている。そして、彼女の鼻や目が真っ赤になっていた。俺がここに来るまでにもたくさん泣いたのだろうと容易に想像ができる。

Aさんの幸せを思って選んだ筈なのに

なんで彼女がこんなにも辛そうに泣くのを堪えているんだろうか。

居てもたっていられず、咄嗟にAさんの手を掴んでしまった。なるべく優しく包み込むように握り締める。

辛かったですよね。

俺、Aさんのことが好きなんですよ。

初めてここの会社に来た時に、困ってた俺に優しく笑いかけて助けてくれた。

中々周囲に馴染めず孤立してた俺を食事や外出に誘ってくれた。

多趣味な俺の話をいつも楽しそうに聞いてくれた。「私もやってみようかな」なんて言って、俺の趣味に興味を持ってくれて。