【d!】ハッピーエンドだけが全てじゃない【短編集】 (ページ40)

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これなんですけど。

そう言って手渡されたのはぶ厚い手帳だった。
表紙には“ショッピ”の名が。

『ショッピの手帳...？』

「勝手ながら中を少しだけ見させてもらったんですけど。

その.....日記だったんです。」

『日記を....？彼が？

なんだか、意外ね。』

「しかもその日記の内容がほとんどAさんについてだったんです。」

『えっ.....？』

ほとんどが私について？

でも、わざわざ彼がこれを私に届けに来たということは。

『チーノくん。

ショッピは何処にいるの？』

その質問を受けたチーノの表情は曇った。

初めの表情といい、この反応。

良い知らせではないことは容易に想像が出来た。

『チーノくん。教えてくれる？』

「ショッピと貴女が別れたと知ったのは、この日記でした。

しかも、あの長期任務の前日に。」

『長期任務？？』

「ショッピは、その長期任務で殉職しました。

味方の中に敵の諜報員がいて、そいつが情報を流して。

予想よりも遥かに多い敵兵が襲いかかってきて。」

『』

声が出せなかった。

呼吸もうまく出来ない。

「そもそも今回の任務はかなり危険で、俺も、他の幹部のみんなも死ぬ覚悟で挑みました。

だから、多分、Aさんを悲しませないように敢えて貴女に嫌われるようにしたんじゃないかと。

俺は思いました。」

口を手で覆う。

声を殺して、静かに泣いた。

チーノはたまらずAを抱きしめた。

ずっと姉のように慕ってきた彼女が、いつも勇敢で頼もしくそして優しい彼女が、今はとても弱々しく見えたから。そんな彼女を見て、不安になってしまったから。

ショッピの死を通して自分の力不足を痛感した。
もし俺がもっと強ければショッピは死ななかったのではないか。
もしあいつが諜報員だと気付いていれば。

Aは、『そんなことないよ。貴方もよく頑張った』と言って彼の背中を優しくさすった。

弟のような彼を、Aもショッピもよく可愛がっていた。生意気だけど、素直で可愛らしい。ショッピにとっても、Aにとっても大事な共通の友人であり仲間だった。

戦線を離れてからもチーノはずっと大切な家族みたいな存在で。

そっと目を閉じてもう一度彼に声をかける。

『大丈夫だよ。ありがとうね。』