悲しい嘘【syp】※死ネタ注意 ページ39
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「好きな人が出来た。
......から、別れてください。」
伏し目がちに紡がれた言葉。
噛み締められた唇が微かに震えているのが見えた。
好きな人が出来た。
その“好きな人”が私じゃないのなら。
一体貴方は誰を想っているの。
『嘘だよね？』
声が震えた。
「嘘じゃない。」
ふと、目が合った。
彼の目は、何故だか揺れていた。
どうして？
まだ、何か迷っている？
『それで、私が納得すると思ってるの？』
「突然すぎるのは分かる。
けど、もう、それしか...」
『..................』
きっと、何かを隠している。
でもそれを私には言えない。
そして、別れて欲しい理由は、“好きな人が出来たから”ではない。
今の私にわかることはこれだけ。
納得できるはずがない。
けど。
ぐっと拳を握り込んだ。
『じゃあ、良いよ。
別れよう。
もう、一生アンタの顔なんか見たくない』
抑え切られず溢れ出した涙はそのままに、
彼の言葉は聞かずその場を後にした。
あの時は、自分も意地を張っていた。
大好きで、とても大切で、深く信頼していたから、意味も分からず別れを告げられたことにひどく腹が立った。
けれど今は、もう、虚しさしか残ってない。
そこに突然、コンコンとドアを叩く音。
そして、
「Aさん、俺です。チーノです」
懐かしい声が聞こえた。
『チーノくんが、どうしてここに....』
そう疑問を口にしたが、ふとある人物を思い出した。
『(まさか、あいつ関連じゃないでしょね....)』
恐る恐るドアを開けると、想像とは違って悲しい表情を浮かべたチーノが立っていた。
「Aさん、お元気でしたか」
『......おかげさまで。
チーノくんこそ、大丈夫....？』
「あの、実はAさんに渡したいものがあって。」
『渡したい...もの？』
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作者名：悠 | 作成日時：2020年9月13日 5時
