【d!】ハッピーエンドだけが全てじゃない【短編集】 (ページ38)

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「今から目指すんやろ？」

『そうだよ。』

「事務所とか、探したん？」

『まだ。
ちゃんとぴーくんの意見を聞いてから動こうと思って。』

「俺がやめろって言ったら、やめてくれるん？」

『私は、女優さんをやりたい。

その為には、捨てる覚悟だってある。』

ー何を。

掠れた声でそう問いかける

『私のことを認めてくれないんなら、ぴーくんと別れるよ。

じゃないとお互いに傷つける未来しかないでしょ』

少し怒りと悲しみを含んだ目つき。

彼女は既に覚悟を決めていた。
自分の大事なものを捨ててまで自分の夢を叶える覚悟を。

『いくら遅くたって関係ない。人生は一度きりだから、後悔したくないんだ。』

彼女の夢は応援したい。けど、表は華やかだろう芸能界には危険だって闇だってたくさん潜んでいる。俺は助けることが出来ない。そんな危ないところに、一人で闘いに行かせられない。

けど、彼女は行く気だから。

一度目を閉じる。泣きそうになるのを必死に堪えた。

自分はここまで未練たらしい男だったのか。

それとも、ここまで本気でAのことを。

目を開け、しっかりとAの目を見た。

「俺は、Aのこと、好きやで。」

『ぴーくん。

私もだよ。』

でも、もうここまでだね。