【d!】ハッピーエンドだけが全てじゃない【短編集】 (ページ34)

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『貴方は、鬱くん......だよね？』

ut「覚えてんの？」

『はっきりと。

生きてて、本当に安心した。』

ut「僕も安心したよ。

君をここから出すようにトントンに話してくる」

『やだっ、』

Aの目線の高さに合うようにしゃがんでいた鬱が立ち上がろうとすると、慌てたようにガラスに手を当ててそう叫ぶA。

彼女の表情は怯え、視線は定まっていなかった。

『もう、生きたくない。

痛いのも汚いのもやだ。』

ut「Aちゃん......？」

『鬱くん。

その手で、終わりにして欲しい。

どうかお願い』

懇願するようにガラスに両手をつけ、力なく首を前に垂らしていた。

彼女の肩は微かに震えている。

ut「Aちゃん。

僕には出来ない。」

『どうしてっ、』

ut「Aちゃん。僕、君が好きだよ。」

あの時言えなかったこと。

ut「これからは僕が守ってあげる。」

非力な僕は、君を守り通せる自信がなかった。

怖かった。

でも、

ut「Aちゃんが死ぬまで守り通すよ」

俺だけじゃない。この国が、君を守る。

だから安心してくれ。

『鬱くん......。』

綺麗に涙を流しながら笑う彼女に近付く。

やっと、君に伝えることが出来た。

もう会えないかと思ってたのに。

鬱は二人の間に隔たる厚いガラスの壁に手をつく。

ut「Aちゃん。好きだよ。」

『私も......ずっとずっと貴方が好きです。』

絡み合う視線。恥じらう両者。

自然と寄せられる二人の顔。

ガラス越しに重ねられた唇は二人にとっての初めてのキスだった。