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予想通り、私に声を掛けてきたのはゾムだった。
『どうしたの』
「今、ちょっとええか？」
『う、うん』
真剣な表情をしているゾム。謎に緊張している自分をなんとか落ち着かせ、彼の言葉を待つ。
「あの、この前はごめん」
『え、どうしてゾムが謝るの？
ゾムが悪い訳ないよ！？』
何を言われるかと思えば......。
あの日のことを彼の方から掘り出してくるとは予想外だった。
あれは悪い悪くないなんか関係ない。私がゾムを好きで、ゾムはそうじゃなかっただけ。何も悪くないんだよ。
慌ててそう言った私の言葉にゾムは何度も首を横に振る。
「ちゃう。意味もなくAを傷付けた俺が悪い。
なあA。もう一回、あの日の返事をさせてもらえへんか？」
『はい？』
もう一度、断られるってこと？
むり。そんなの耐えられる訳ないよ。
私は必死に首を横に振る。
『ダメ！もう分かってるから。だからもう一回なんて言う必要ないよ。』
「ちゃう！あれは、嘘なんやっ」
ガシッとゾムは私の肩を掴んだ。
月光に照らされた彼の翡翠の眼が、頼りなさそうに揺れている。
「本当は.....Aの誕生日に、俺から言おうとしてた。
だから、咄嗟に断ってしまった....。
勇気を出して言ってくれたのに、それを自分の勝手で意味もなく切り捨ててしまったことはほんまに謝らせてくれ。」
そう言って、私の肩から手を離したゾムは深々と頭を下げる。
『ゾ、ゾム....』
「それから、」
少し言葉に詰まった後、ゆっくりと顔を上げたゾムの頬は真っ赤に染まっていて、
ドクンと高鳴る自分の胸をそっと押さえつけた。
次に紡がれた言葉は、私がずっと待ち望んでいたもので。
私は声を上げて泣いてしまった。
「俺も、Aのことが好きです。
どうか、俺と付き合ってください。
もう一生、お前を離さへんから。」
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作者名：悠 | 作成日時：2020年9月13日 5時
