『PSYCHO-PASS』シビュラに見放された執行官

♯09　判断 ページ11

「ハァ…ハァ…ハァ…」

彼女はどこへ逃げたのだろうか？

廃棄区画と言ってもそれなりの広さはある。

しかも彼女が逃げ込んだのは旧世代に使用されていた科学薬品などの危険物が放置されている場所だ。

その証拠に…

「この臭いは…灯油‥？」

灯油は昔の家庭用暖房器具などに使用されていた燃料だ。

前に智己さんにそう教えてもらったことがある。

ただ、これだけの臭いがするということは‥

どこかから漏れている？

それだけ大量の灯油が放置されている？

どちらにしても悠長に追跡している時間はない。

早く彼女を保護しないと…

それから数分追跡していたら‥

「狡噛さん!!」

そう叫ぶ常守監視官の声が聞こえた。

声の大きさと方角からしてそう遠くはないだろう。

私の考えは当たっていたようですぐに現場へ到着した。

ただ…

彼女は精神が限界にまで追い詰められていたのだろう。

「もう来んなよッ!!」

彼女がそう叫ぶと同時に…

『対象の驚異判定が更新されました。執行モードリーサル・エリミネーター。慎重に照準を定め、対象を排除して下さい。

シビュラが彼女はこの世界にはもう必要ないと判断してしまった。

「……そんな…っ」

常守監視官はその判断が信じられないようだ。

慎也さんは自分が何をするべきなのか分かっている。

彼女を排除しようとドミネーターに指をかけた…が。

「やめてええぇぇぇッ!!!」

!?

犯罪者でさえ撃つのを躊躇った常守監視官が慎也さんを撃った!?

私にはその方が信じられなかった。

慎也さんはそのまま壁にもたれかけ、地面へ倒れこんだ。

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