Vol.10 ページ11
「あと少し時間ちょうだい！！」
そう言うと私の腕をつかんで急に走り出した裕太くん。
「ゆ、裕太くん！？」
大丈夫？って言いながらも私の腕をつかんだまま大通りへ出てタクシーをつかまえた裕太くん。聞いたことない行き先を運転手さんに告げるとそのあとは何も言わずにまっすぐ前を見てる
つかんだ手を離そうともせず無言で難しい顔をしている裕太くんに不安になってちらっと顔を伺い見るけど動じない
何かを言うのを諦めて私もただ俯いてタクシーが停まるのを待った
しばらく走って薄暗く人気のない場所で停まった。タクシーが去るとほんとに真っ暗で周りも何もない。
あれ？裕太くんタクシー代今お財布だして払ってたよね！？
えっ？何で？
でもそんなこと問いただす間もなく歩き出す裕太くん。
「少し歩いてもいい？」
そう言うとつかんでいた私の手を自分のチェスターコートのポケットにそっと入れた
「ちょっと、裕太くん！？」
焦って裕太くんを見上げるとさっきまでの難しい顔じゃなくて優しい顔をした裕太くんがこっちを見て笑ってる
「寒いから。もう少し頑張って」
こっちの焦りも気にせず相変わらずのマイペースで私を引っ張っていく
小高い山に続く階段をもう少しで上りきるところで裕太くんが
「Aちゃん、目瞑って？」
って言うから言われるがままに目を瞑って裕太くんに手を引かれて歩いていく。
ようやく手を離してくれた裕太くんが
「目を開けて〜」って嬉しそうに言うから
そ〜っと開けてみた
「うわ〜！！綺麗〜！！」
そこには都会の夜景が広がっていてどこもキラキラ輝いている
あまりにも綺麗な光景に目を奪われていたら
「Aちゃん、お誕生日おめでとう！！
僕からのプレゼント間に合って良かったー笑」
その言葉に驚いて隣にいる裕太くんを見たら
ふにゃって笑って照れくさそうにしてる
「裕太くん…………」
その嬉しそうな笑顔を見てたら何故か目の奥が熱くなってきて涙が止まらなくなって……
「彼氏じやなくてごめんね笑」
そんな言葉にも頭を横に振ることしかできなくてもうぐしゃぐしゃ。
そんな私の頭をずっと"よしよし"って撫でてくれてた。
どっちが歳上だかわかんなくなっちゃった……
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作者名：silkball | 作成日時：2017年6月22日 15時
