第14章─２話 相反する思い ページ5
怒りに打ち震える円堂。そんな彼の肩を、豪炎寺が掴んだ。それを受け、円堂は1つ深呼吸する。そんな円堂に、豪炎寺は頷いて見せた。
「…円堂」
Aが、円堂の名前を呼ぶ。
「…円堂くん」
「円堂くん」
夏未と木野がそれに続く。そして彼女たちに続くように、雷門イレブンは円堂の名前を呼んだ。それを受けて、円堂は握っていた拳を解く。そしてふぅ、とまた1つ息をついた。
「監督…皆…」
「………」
「こんなに俺を想ってくれる仲間、皆に会えたのは、サッカーのおかげなんだ。影山は憎い、けどそんな気持ちでプレーしたくない」
「円堂…」
Aが呟く。
「サッカーは楽しくて、面白くて、わくわくする…1つのボールに皆の熱い気持ちをぶつける、最高のスポーツなんだ…だからこの試合も、俺はいつもの、俺たちのサッカーをする！皆と優勝を目指す！サッカーが好きだから！」
円堂の言葉に、皆が頷く。その様子を見ていた響木が声を上げた。
「さあ、試合の準備だ！」
「はい！」
そして、皆はフィールドから走り去っていった。
「監督」
唯一残ったAは、皆の背中を見つめる響木へ声をかける。
「監督は円堂が…ああいう風に、影山への憎しみでサッカーをしないと分かっていたから、あんなことを言ったんですよね？」
Aの言葉に、響木は何も言わなかった。しかし、彼女にとってはそれで十分だった。
「監督、私は…自分が影山をどう思っているのか、正直自分でも分かりかねているんです」
「………」
「あの人のしたことは許せない、犯した罪は憎い。けれど…私はあの人がいなかったら、今まで生きてこられなかったかもしれない」
Aの中には、その2つの感情が相反していた。
「だから私は…今は、私があの人の娘であることを忘れてただ純粋に、雷門の皆を応援したいんです。何だかんだ言っても、やっぱり私は…サッカーが大好きで、生粋のサッカー馬鹿なんですから」
そう言って、Aはフッと微笑んだ。そんなAに響木は頷いて見せた。
「お前はそれでいい。今は雷門のマネージャーとして、あいつらを応援してやるんだ」
「…はい！」
そう言ってまた微笑んだ彼女の笑顔は、響木には幼く、そして眩しく映った。そしてAは、先程影山がいた方へ視線を上げた。そして呟いた。
「…お父様。きっと何度でも、私は証明して見せるわ…正義は必ず勝つということを」
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作者名：紫苑 | 作成日時：2023年10月3日 0時
