アブノーマルと【黒】 (ページ50)

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どうしたページ50

よこやま

………頭、痛いな。何処やろ、ここ。

酒飲みすぎた時特有の頭痛に堪えて身体を起こした。

大きくてフカフカのベッドに、上着やジーンズやらの動きにくくなるようなもの剥がれて寝かされとった。

黒「…俺」

歌川さんとご飯食べにいって、なんや知らんけど、多分強い酒飲まされたんかな。

それ思い出したのと同時に聞こえる声。と焦り。

久しぶりに、酒飲んでやってもうた？

まじ？え、あの…まじ？

近くにスマホも無いから、とりあえず部屋から出た。

『うん、わかった。じゃあ……ちゃんとやっといてね』

［わかってるって］

『また、あれしてんの。スナッフビデオ』

［ジョーダン。あんな気味悪いの、持ってるだけで呪われるって。大体にして、捕まりでもしたら］

『日本中どころか世界でニュースになるよ、面白い。サイコパスの手下かって言われてさ』

［縁起でもない。馬鹿かよ死ね］

『死ねるもんなら今すぐ死ぬわ』

ソファに座ってパソコン見ながら、歌川さんは誰かと電話してた。

あと、誰やろ。ひとり、男の人がいる。

『シンヤくん、行くの？』

「おう」

『えー。久しぶりに会ったのに』

「いいから、さつき今どこ？」

『いまぁ？なんか、歌舞伎町のSMビルの所にいるよ。ロッカーにでも隠れてるんじゃない？』

「何階？」

『知らないよそれは。自分で探しなね』

「めんどくせぇ。てかあいつよく捕まらないな」

『ほんと、あれは一種の才能でしょ』

「もう速報出てる」

『何人目だっけ』

「知るか」

無気力そうな二人の会話の意味と、俺がしばらくの間感じてた違和感の正体がやっと合致した。

黒「歌川さん」

恐る恐る名前を呼ぶと、バッと二人は俺を見た。

『…聞いてましたか？』

「俺帰るわ。さつき迎えに行く」

『捕まらないでね』

「ああ。じゃあまた」

男の人は帰った。

この家にいるのは俺と歌川さんの二人だけ。

なのに、何人もの人間の視線を感じた。

きっと今から知ることは、真実。

知ることは恐怖。