#18 ページ18
･
｢あの、よかったらそこの席どうぞ｣
青ざめた顔をした女子中学生に席を譲られるという
ちょっと異様な光景
本当は今すぐにでも自分が座ってやりたいところなのだが
困っている人がいたら助けてあげなさいと母親に厳しく叩き込まれて育ったAはそれができなかった
貧血でフラフラ、人混みで酔って気持ち悪い感覚を必死に殺して地団駄を踏む幼い女の子とその母親に
Aはついつい席を譲ってしまったのだった
｢すみません、ありがとうございます｣
｢おねーちゃんありがとう！｣
困っている人がいたら助けてあげることと叩き込まれて育ったのもそうだが
Aにもこの子よりも少し大きい弟がいたためか
こうやって疲れたと大勢の人間がいる中で暴れ回る子供の世話をする大変さはよくわかる
大変な思いをしている女の子のお母さんを少しでも休ませてあげたい気持ちが勝った
｢(頑張れ、あともう少しだから)｣
揺れに耐えれば何とかなる
しかしこういう時こそ悲劇は起こる
次の駅に停車する際
ブレーキをかけた途端思い切り車内が大きく揺れた
これは辛い、かなり辛い、できることなら泣きたいくらい
10点差以上つけられた試合展開と今の揺れどっちが辛い？と聞かれたら今は迷いなく後者を選ぶだろう
耳を劈くような音と共に駅に停車した電車
大きく揺れ、傾く大勢の人たち
Aもまた盛大に姿勢を崩して傾いてしまった乗客の1人
が、悲劇はこれで終わらない
電車に揺られた影響でますます体調を崩したAはもう足に力がほとんど入らず、踏ん張りが利かなくなり
｢やばっ、｣
そのまま足を捻り
気づいた時には
バランスを崩してしまっていた
｢(待って、今ここで転んだら恥ずかしいどころじゃない)｣
｢(人生まるっと終わっちゃう)｣
Aが盛大に公衆の面前で恥を晒すまで
あと3秒
これはもう無理だ、抵抗することなく転んでおこう
そう思いギュッと目を瞑ったその時
あの日見ていた憧れとまさかの邂逅を果たす
｢あぶねっ｣
そこに居合わせたのは
まだ高校生になったばかりの爽やかさ3倍の三井
転びかけたAを前に咄嗟の判断で手が出てしまったのか
見事に抱きとめられてしまった
｢大丈夫か？｣
あの試合の時からちっとも変わってない
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 201人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ピトリコ(プロフ) - 高校生ならではの会話が凄くリアルで惹き込まれました！これから最新話まで一気に読破します！素敵な作品に出会えてよかったです。 (2023年3月31日 20時) (
レス) id: 36bff0e057 (このIDを非表示/違反報告)
みみ(プロフ) - こちめるさん» 無理せず頑張って下さい！更新楽しみにしてます＾＾ (2023年2月10日 22時) (レス) @page50 id: 27c27c579a (このIDを非表示/違反報告)
こちめる(プロフ) - みみさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけてとっても嬉しいです🥲 (2023年2月10日 0時) (レス) id: b38c8404b7 (このIDを非表示/違反報告)
みみ(プロフ) - いつも楽しみにしてます^_^ (2023年2月9日 10時) (レス) @page50 id: 27c27c579a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こちめる
| 作成日時：2023年1月29日 20時
