第３５話 ページ35
夜を映した窓に、私の顔が反射している。
そのどこか寂しそうな表情には、ぽつぽつと賑やかな光が浮かんでいた。町のネオンだった。
下の方を覗き込むと、背広にソフト帽姿の七人組が見える。その姿を見送ってから、私はカーテンを閉めて振り返った。
｢…二人きりですね｣
｢そうだな｣
佐久間さんははにかんで、「いつかもこんな夜があったな」と言った。
彼は続ける。
「あのときから…既に三好とは、付き合っていたのか？」
「いいえ」
「なら、何故あいつを選んだんだ？ 盗聴したり皮肉を言ったり、俺ならとても付き合いきれん」
佐久間さんは疲れきった顔で、箱から煙草を一本、取り出した。
私は苦笑を浮かべて、窓際の椅子に腰かけた。
「どうして…三好さんだったんでしょうね」
ふと空を見ると、満月だった。
たしか、あの日も─────
私が食堂を出ようとすると、トントン、という音がした。
入り口近くの席の三好と目が合う。彼が机を指で叩いたらしい。短くなった煙草を咥えて、手にはトランプを持っていた。
「何です？」
「少し、付き合っていただけませんか」
見たところ賭金などはないらしい…それならば、と暇潰しに付き合うことにした。
「本当は、あなた方とは遊びたくないんですけど…」
「お付き合いします。三好さんにだけ、サービスですよ」と言ってみる。三好は愛想のいい笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます。では…ハイアンドローでもしませんか？ 僕が親をやります」
「他にないんですか？」
「そうですね…」
三好は咥えていた煙草を灰皿に押し付けると、トランプに視線を落とした。しなやかな手が慣れたようにトランプを弄ぶ。
「じゃんけんなら、どうです？」
私は失笑しながら、三好の正面に腰かけた。
私たちに降り注ぐ黄色っぽい照明の光は、煙をぼんやりと照らした。
「…じゃんけんで」
「分かりました。では四回勝負で」
「ええ」
「それと、Aさん」
「はい？」
三好がニヤリと口角を上げた。顎を引いて、煽るような目で私を見上げる。
「敗者は、一度だけ勝者の命令に従うこと……敗者と勝者の関係が明確でないゲームなんて、する意味がないでしょう？」
────結果は、私の全敗だった。
…勝つ気はなかったものの、全試合負けたのには流石に驚いた。
私が引き分けを狙うのも、三好は当然分かっていたのだろう。
私は掌を見つめて、溜め息を吐いた。
「敵いませんね。命令をどうぞ」
「ふふ、では遠慮なく…─────」
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凛々(プロフ) - とても面白かったです！！原作のイメージが全く崩れないっtとりとした雰囲気が最高でした。蝶のくだりは思わず泣きました。素敵なお話を書いてくださってありがとうございます。このお話に出会えて良かったです。 (2019年12月18日 0時) (
レス) id: 2ad6838eaa (このIDを非表示/違反報告)
こな(プロフ) - 燐さん» 返信が遅くなり申し訳ありません！とんでもないです、ありがとうございます！楽しんで頂けたようで嬉しく思います(^^) (2018年10月22日 11時) (レス) id: 6c36d7dbcf (このIDを非表示/違反報告)
燐 - めっちゃ切ない…!文才ハンパないっすね。展開もリアルで面白かったです！ラスト、三好さんの声が聞こえたトコロめっちゃ感動しました！ (2018年10月16日 22時) (レス) id: 6e4e502025 (このIDを非表示/違反報告)
こな(プロフ) - 信乃さん» ありがとうございます！そう言ってくださる読者様のおかげです(;;)最後まで読んでくださりありがとうございました！ (2018年10月15日 0時) (レス) id: 6c36d7dbcf (このIDを非表示/違反報告)
信乃(プロフ) - 完結おめでとうございます。毎回更新が楽しみでした！楽しく読ませていただきありがとうございました。 (2018年10月14日 21時) (レス) id: 3929cd90dd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こな | 作成日時：2017年5月28日 15時
